生命とはなにか。
生命とはそもそも何でありましょうか。生命についての観念に触れる前に、まずは概念について言及したいと思います。
科学(概念)では生命(厳密には生物)というものを
①子孫を残せる(複製)
②他との明瞭な区分があること(細胞)
③代謝があること
以上の三つの要件を満たすものと考えられております。
例えば人間は、セックスをして子供を創るという点で子孫残せますし①、むろんのこと細胞もあり②、食事をして元気をつけている③以上、概念の上で生命であります。鳥にせよ、卵を産む①、そうして細胞があって②、魚や穀物を食べている③以上概念の上で生命であります。では、ウイルスはどうでしょうか?。我々の表象としてウイルスもある一つの生命のように思われますが、実はウイルスは宿主細胞に依存して複製を行っており①の要件を満たしておりません。つまりは、単独では子孫を創れないのであり、生物学上では無生物、あるいは半生物と定義されることがほとんどであります。
ところで、ウイルスの例のように概念としての生命と、表象としての生命にギャップがあるのはなぜでしょうか?いくら合理的に以上の要件が設けられているにせよ、こうした表象とのズレが起こる以上、そこには観念の存在、あるいは定義の不十分さや認知のゆがみがあるのではないでしょうか。
さて、ここでは、観念の存在について論じたいと思います。
例えば皆さん、上の定義は忘れていただいて1-11の間で生命とそうでないものの線引きを思うままに判断してください。
1人は生命でしょうか? 6ミドリムシは生命でしょうか?
2ゴリラは生命でしょうか? 7大腸菌は生命でしょうか?
3犬は生命でしょうか? 8大腸菌の持つたんぱく質は生命でしょうか?
4ネズミは生命でしょうか? 9タンパク質をつくるアミノ酸は生命でしょうか?
5昆虫.植物は生命でしょうか?10アミノ酸にある窒素原子は生命でしょうか?
11窒素原子を創る粒子は生命でしょうか?
多くの方は7-8当たりを区分とすると思われます。しかし、7-8を大衆の表象による生命とそうでないものの区分としたとき、不都合な現状があります。
それは動物愛護の観念です。例えば、ゴリラやイルカは大切にしよう、殺してはならないという観念は一般的で、これは犬にも当てはまります。また、熱心な動物愛護の活動家の中には実験室でネズミやカエルを殺すことを厭う方もおりましょう。しかし、昆虫は? おなじ生命でありながら、我々は平然とこれを殺します。もっと言えば大腸菌などの細菌、彼らは栄養状態さえよければ一日で一匹から凡そ13万匹まで増殖するのです。実験室なんかでは普通、一匹の大腸菌などと言わずもっと一遍に増殖させるので、数億匹、数十億匹という大腸菌を増殖させていると考えてください。そうして、最後には殺すのです。これが犬や猫であるとすれば、動物愛護団体は黙ってないでしょう。むろん、それは正しいことですが、しかし、動物愛護の観念として細菌が死ぬのはよろしいことなのでしょうか?。皆さんの表象によれば、犬もゴリラも大腸菌も同じ生物であるのに、なぜ、動物愛護という観念が植物や大腸菌には適用されないのでしょうか?。
そろそろ、動物愛護は動物に対する愛護であり、植物や微生物に対するものではないという声が聞こえてきそうですが、その通りなのです。我々は実を言えば生命として虐げられない権利を動物にしか与えておらず、そのほかは虐げられてよい生命であるという判断をしているのです。たとい好奇心という観念において、あるいは、汚いからという勝手な観念において殺されても、動物じゃないから文句は言えないとする観念があるということです。
もはや勘の鋭い方はお気づきかもしれませんが、これは動物愛護云々の問題ではなく、我々が持つ生命に対しての観念についての問題なのです。つまりは、7-8が生命とそうでないものの区分と言いつつも、直感的には6-7,もっと言えば5-6,4-5にその区分はあると我々は考えており、そうしてその根底には、虫けらなぞ、ばい菌フゼイなぞ生命であるまいとする観念を有しているのではないでしょうか?
さて、なぜ、そんな観念が生じるのでしょうか。あるいは、その観念に素直になったとき、生命とは今一度何者であるといえばよろしいのでしょうか。
(1章に基づき自説は述べません)
ところで、昔あるところに生命なぞ存在せぬという人非人がおりました。
彼は、生命なぞ存在しないというのです。つまりは、人間含めすべての生命がタンパク質の良くできた機械に過ぎぬと。その論証として、①生化学によって我々の生体の神秘などはもはやなくなり、総ては化学式で割り切れるようになった。②大腸菌のような生命は全く条件反射で生きている。③人間は条件反射で規定されるものではないが、脳という高度な演算装置を持つだけに過ぎない。
∴生命などは存在しない。
賛否や善悪は様々でありますが、さて、擁護するにしても、批判するにしても、皆さんは彼にどう発言するでしょうか。
生命観 東 哲信 @haradatoshiki
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