街外れの丘で

家族同士の「愛」

友達同士の「愛」

恋人同士の「愛」

遠い遠い、世界の人々への「愛」

地球への「愛」

世界は愛で満ちている。


そんな愛を、僕は知らない。

家族に愛された記憶もなければ

誰かを愛したことも無い。


僕から欠けた感情、「愛」


愛を見つけたくて、僕は歩いていく。


6月の終わり、梅雨も明けて日差しは強差を増しながら僕らを刺していく。


決して都会とは言えない街を歩む。

スーパー、洋服店、シャッターの降りた花屋、テストの結果を気にしながら歩く学生。

オシャレなカフェに、小さなラーメン屋、

居酒屋、その全てを夏の日差しのスポットライトが照らしている。


少し歩けば住宅街に差し掛かり、昼間の静寂に包まれる。


だんだん閑散としていく風景にも慣れきったせいか、興味のひとつもひかない。


街外れに出れば田んぼや畑が目に入る。


街外れの丘、僕はこの場所が落ち着く。

背の高い向日葵の黄色が葉の緑にいいアクセントになっている。

もう、夏なんだと改めて実感する。


きっと僕は明日も、明後日も、半年後も、来年もここにいるのだろう。


向日葵の奥から声がした。


「ねぇ、ここにいるの、好き?」

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蜃気楼が魅せた夢 卯鷺ゆりかご @Bungo1023

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