蜃気楼が魅せた夢
卯鷺ゆりかご
序
僕が2歳の時、母はこの世を去った。
肺癌だったらしい。
父はその後以前の人格から変わり果て、酒に溺れ、賭け事に溺れたそうだ。
それから数ヶ月して母の後を追う、といった旨が書かれた遺書とともに自室で息絶えた状態で見つかったと祖母から聞いている。
父と母の結婚を母方の親族は反対していたそうだ。それを無視して結婚したらしい。それ以降、母方の親族とは縁が切れたに近い状態だった。だから両親のいない僕を祖父母が育ててくれた。
といっても、それは9歳までの話。
それまで僕は虐待という概念がなかった。
その後、児童保護施設に入り1年程で里親が見つかった。
里親のもとで暮らして数ヶ月してわかったことがあった。
それは里親は良心で僕を引き取ったのでは無く、家事や介護をしてくれる人が欲しかったからなのだ。
お前を児童保護施設から引き取った恩を忘れるな、そんな言葉を何回聞いたことか。
学校に行かず、家に住むおばあさんの介護を朝から晩までしながら、洗濯、掃除、料理と家事をこなした。
月1回で来てくれる家庭教師に勉強は教わった。学校に行っていないため、学力は乏しかった。それを疑われることもあったが、毎回里親が「学校でいじめられたトラウマから不登校になっちゃって」などとそれっぽい理由を述べていた。
15歳になると僕は家を出て、バイトをしながらその日暮らしをするようになった。
社会に出て生きていくうちに、自分には幾つか欠けてしまった感情があることを知った。
16歳になった今、
僕は、欠けた感情を探している
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