読み切り 2話目 -演と宴と塩-
「なんだてめぇ!?」
大柄な男がそう喚く.
無理もないだろう, 一瞬のうちに仲間が2人のびているのだから.
「悪党に名乗る名はない…うら若き乙女を攫おうとする企み, 巧みに防いで見せよう!」
聞いてるだけで恥ずかしくなるような言葉を発しながらその男は踊りだした.
「いやホントになんだてめぇ!?!?!??」
こればかりは同意見である, 守ってもらっている立場だけれども.
「まぁいい…邪魔するってんなら覚悟できてんだろうな?」
そういいながら大柄な男はナイフを出してそれを舐めた.
それを見て目の前の男は
「止めたほうがいい…」
「あっ…?」
「ナイフを舐めるのは止めたほうがいい, 舌に傷がついてしまうからな…そうなってしまえば謝罪が出来なくなる…だから早くしまったほうがいい.」
そういって手をクイクイッとして挑発する. それに乗った大柄な男は
「てめぇ…!ぶった斬る!!!」
額に血管を浮かせながらナイフを挙げ真っすぐ突っ込んできた.
「演舞 -沙流-」
そう言いながら目の前の男は踊りだし
振り下ろした腕を蹴ってナイフを落とさせ
くるりと回って足を蹴り
そしてそのままアゴを手のひらで打ち抜いた.
「ぐべぇあ!!!」
そのまま大柄な男は崩れかけたが
「お…覚えてやがれ!!」
すぐさま体勢を整えて仲間の男2人を担ぎ逃げてしまった. それを見ながら
「フン!三流の言葉なんか覚えるかい!」
最初に出会った時とはまた違った雰囲気で男が笑っていた.
------------------------------------------------------------------------------------------------
「ありがとうございます!守ってもらったあげく帰り道の護衛まで…」
「良いって事よ! 俺も帰り道こっちだし!」
あの後また襲われては危険だと, この方がそのまま帰り道まで護衛をしてくれた.
(しかしさっきの踊りや言葉といい一体なんだったのでしょうか, それに最初のキザったらしい言葉遣いから一転軽い言葉遣いになってますし…)
見ず知らずの女性を守ってくれた人を詮索するのは良くないと思いながらも, それ以上に気になるため
「あ! あの…よかったら家まで来てくれないでしょうか? もしよかったらお礼をしたいのですが…」
そう言って引き留めるが
「お心遣いサンキュ!でも夜も遅いし迷惑だろ?だから遠慮しとくよ!」
そう言って猛スピードで今来た道を逆走してしまった. あまりの速さにビックリした私はハッとなり
「では!最後にお名前だけでも!私の名前は大場 海璃です!」
そう叫んで
「いい名前じゃん!俺の名前は円山 塩(えんやま えん)!縁があったらまた会おう!」
そう叫び返されあっという間に暗闇に消えていった.
「円山 塩…変な人だったな…」
そう呟きながら私も帰路についた.
(でも帰り道がこっちなのに, 何故逆走しているのでしょうか?)
そんな些細なことを胸にテクテク歩く.
(もしかして…ドジなのかしら?!)
そう結論付けてフフッと笑いながら夜空を見上げた.
演舞な言霊使い @StepO
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。演舞な言霊使いの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます