「大掃除」
低迷アクション
第1話
「P君、今日の大掃除、よろしくね」
友人の“P”は大学時代にリサイクルショップで働いた事がある。家具に家電、玩具など、様々なモノが持ち込まれ、店頭はまだしも、裏の倉庫は“ガラクタ”で一杯…
だから、この店では年末前に1日店を閉め、倉庫の大掃除を行う。帰省した実家での
三が日は、何かと物入り…臨時収入を期待して、引き受けた。
バイト仲間の中で一番若い彼は、黴臭い倉庫へ入り、物品を近くの駐車場に運び出す。埃が立ち込める薄暗い倉庫は、今ではあまり見ない二層型の洗濯機や、まだ使えそうな新品の品々、巻物、模造刀など、時代がごった煮の様相だ。
朝から始めて、お昼になっても、作業が終わらない。
「いやーっ、皆、お疲れー、時間かかるけど、これやっておかないと、
新しい年始められないからね~?店の方にお昼あるから、外寒いし、とりあえず、
中で休憩してね」
店長の言葉に、全員が店舗に入っていく。一番最後に、作業を終えたPは必然的に、
誰もいない駐車場で倉庫番の役目を担った方が良さそうだ。飲み物を手にし、手近の古椅子に腰かけていると、不意に視線を感じ、振り返った。
「へっ?」
着物姿の老婆が倉庫から出てきている。自分しか中にいなかった筈、そもそも、こんな人、
バイト仲間にはいない…
冬の陽射しで、顔に影がさし、表情まで、わからない。
老婆はPを気にする風でもなく、静かに歩き、駐車場を出て、何処かに歩き去った。
唖然と、それを見送る自身は次の瞬間、悲鳴を上げそうになる。
「…っ…何なんだよ?」
どうにか抑えた口から声を洩らす。
倉庫から次々と人が出てきていた。学生服に花嫁衣裳、スーツに普段着、着物、女に子供、老人、様々な年代を感じさせる人物達がひしめき合いながら、Pの傍を抜けていく。
椅子から転げ落ち、いや、彼等から避けるように、尻もちをつく。
「あーっ、P君、ここにいたかぁ~?休憩は店の中にって言ったのにな、もう~」
いつの間にかPの背後に立った店長が、普段と変わらない様子で声をかけてくる。
「て、店長、この人達…」
「あぁーっ、それね。気にしない、気にしない。人の気配がなくなったからね。
うん、毎年恒例…休憩終わる頃には、いなくなってるから」
「人の気配?…じゃぁ、これは?」
店長が片手を上げ、自身の言葉を遮る。
「言ったでしょ?これやっておかないとね、新しい年こないから」
“やらなかったら?”とは聞けない雰囲気がそこにはあった…(終)
「大掃除」 低迷アクション @0516001a
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