『未来の設計図』

N(えぬ)

未来の設計図 一話完結

その建物は美しく大きくそびえたっていた。相当に古いものであったから、世界的にも有名で観光名所にもなっていた。

そして大きくそびえたってはいたが、まだ完成はしていなかった。



「なあ、このまだ原始的な星に我々が訪れた証として、何かを残していこうと思うんだが、どうだろう?」

古代の地球を訪れた異星人たちは話し合った。そして、自分たちの足跡というべきものを地球に残すことに賛成した。

「でも、どういうものをどんな形で残せばいいと思う?この星にはまだ知性のある生物が少ないから、下手なものを残しても紛失してしまう可能性がある」

「そうだなぁ……」


そこで異星人が考えたのは、地球に今存在している知性ある動物が理解できる技術を建造物の形にして内容の説明とともに設計図とし、それを授けて行くという方法だった。

「この設計図を使って彼らが建造物を作っていけば、完成した時に今の我々と同じレベルの文化に到達するということだ」


そうして、その建造物は地球人に与えられた設計図によって造られていったが、時とともに遺跡扱いされるようになり、修復が必要になった。修復には金がかかるし時間もかかる。そしてその上にさらに建造を続ける。それにも金と時間がかかった。しかも設計図通りに造るには科学技術の進歩も必要だった。さらに時が流れると、昔の地球の言葉は現代人には解読が必要な言葉になってしまった。



「この建物はわかっている限り、建造が始まって三千年を超えていますが、いまだ建造中です。完成にはまだあと同じくらいの時間がかかるのではないかといわれています。完成までの設計図は確かに存在していて、それは現代では読むことも困難な古代文字で記されており、専門家が解読しながら建造が続けられているのです。これは世界の七不思議に数えられていて……」

ガイドの説明に団体の観光客は「おぉ」っと少し感心したような声が上がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『未来の設計図』 N(えぬ) @enu2020

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ