最終話 未来へのトラック魔法

 流星となった魔王マガラを背に、ライドはルピスの元に降り立った。

 見つめ合うライドとルピス。先に口を開いたのは、ルピスからだった。


「あのね、ライド。私――」


「ルピス、僕から言わせてもらっていいかな?」


 ルピスが頷くよりも前に、ライドは言う。


「僕は今まで君と向き合うのが怖かった。立場とか君への想いとか、そういうのを全部考え込んでしまって、それで立ち止まってしまっていた」


「ライド……」


「けど、最近の戦いが僕の背中を押してくれたんだ。勇者ヴァレヘイム、天使フロウティフォン、魔王マガラ。彼らとの戦いを経験して、僕は改めて君への想いを再確認できた」


 ライドは力強くこう言った。



「僕はルピス、君を愛している。願わくばずっと一緒にいたい」


「当たり前だよ!」



 ルピスはライドに抱きついた。彼からは見えないが、ルピスは喜びの涙を流していた。


「私はライドが好き! ずっと好き! いつまでも一緒にいたい! だから、私はその言葉を聞けて、すっごく嬉しいの」


「今までごめんルピス。僕が弱いばかりに、君を不安にさせてしまっていた」


「いいの! ライドはこうしてちゃんと私を選んでくれた。私と一緒に歩いてくれる道を選んでくれた! それでもう、良いんだよ!」


「ルピス……」


 二人の顔が徐々に近づき、そして唇が触れ合う。長い旅路の果てに、ライドはとうとう望む結果を掴み取った。

 短くて長い口づけを交わした後、ルピスは笑顔でこう言った。


「じゃ、これからお父様の所へ行こうよ! ライドがようやく私に想いを告げてくれたって報告したいし」


「ようやく……って、まさか相談していたのか?」


「うん。ライドからちゃんと想いを伝えられたら、交際を認めるってさ」


「はは……僕の葛藤は何だったんだよ」


「お父様の試練、っていったところかな? 良かったね! 合格!」


「ま、無事に合格出来たんだから、胸を張ることにするよ。じゃあ、行くかルピス」


「うん……って、ひゃ!」


 ライドがルピスを抱えた。いわゆるお姫様抱っこである。


「トラァァァァァァック!」


 轟音を轟かせ、トラックがやってきた。ライドはルピスを抱えたまま跳躍すると、そのままトラックの上に乗った。

 トラックは動き、空を駆けていく。向かうはシンクレティア王城。ルピスの父親であり、この国の王が住む場所。


「ねえライド、結局このトラックっていう物は何なんだろうね?」


「さっぱり分からない。でも、分かることはあるよ」


 ライドはこのトラックについて、こう纏めた。


「このトラックはあらゆる存在を逆異世界転生させる鋼鉄の猛牛。この猛牛はきっと、僕の迷いを逆異世界転生させるために、僕の前に現れたんじゃないか。今だと、そう思うんだ」


「そっか。トラックってすごいんだね」


「あぁ。そして、これからもこのトラックは僕の想いを運び続けてくれる。そして、あらゆる困難を逆異世界転生させていくんだ。今までは僕のために、これからは僕と君のために」



 二人を乗せた鋼鉄の猛牛は空にアーチを描く。

 トラックはこれからも、二人の未来を描き続けていくだろう。



「ところでライド。私、早く子どもが欲しいから、よろしくね!」


「君のその素直さは本当に大好きだよ」


「私もライドが大好き!」



 


【トラック魔法を極めた王女の幼馴染兼護衛があらゆる困難を逆異世界転生させていきます 完】


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トラック魔法を極めた王女の幼馴染兼護衛があらゆる困難を逆異世界転生させていきます【完結】 右助 @suketaro07

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