おしまい

 ――私たちは、制服姿で埃が舞う布団のうえで体を重ねた。


 良輔はあとで何度も謝ってきた。私は晴れやかに、いいよ、ありがとうと返す。

「付き合ってもいいよ」

 自然と口を突いて出ていた。彼が丸い目をして「いいの?」と聞き返すので、いいよと口元を緩ませる。

「ありがとう」

 彼が短く唇を重ねた。いつぶりだろう、お互い屈託のない顔で笑い合った。


   *


 その後、遥月は秋田の短大に進学していった。卒業すると、縁あってそのまま秋田で結婚した。

 私と良輔はというと、復縁して一年半で終わりになった。別れた理由は、私にまた他に好きな人ができたからだった。


 中学生の頃、新任の先生が自らの大恋愛を壮大に語りあげていたことがあったが「人ってね、本当に一番好きな人とは結ばれないようになってんだよ」と、苦笑まじりにこぼしていたのを憶えている。

 良輔も、私も、本当に好きな相手とは最終的に結ばれなかったのだから、先生がいっていたこともあながち間違いでもなかったのかも、なんてことをぼんやり考えてしまう。


 ――はじめての本当の恋は、儚い夢みたいだった。追いかけても追いかけても遠くて、見る間に散り失せていった。

 がむしゃらに愛し、愛され、熱にまみれていたあの時代はもうずいぶん昔の話になってしまったけれど、無鉄砲な十代の私が、本当の恋とはどんなものかを教えてくれた。尊い、愛するという気持ちを教えてくれた。

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飛散のあわいに ウワノソラ。 @uwa_

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