第5話・夢は叶えるものじゃなく、育てるもの。
手を挙げてくれたのは、ヒーラのよーこさん。そして、サポートをお願いしたいというお客様は、作家のちかさんだった。
よくジャズBARに行くと、お客様同士でLIVEセッションをする光景を見かける。それと同じように、LIVE朗読としてお客様同士が即興で、夢を叶え合うセッションがスタートした。
「では、空間心理カウンセラーの伊藤勇司さんに許可をいただき、ブログの記事を朗読として2人で読ませていただきます。」
今回ヒーラーのようこさんが即興で選んだものは・・・
「わたし、全然才能がないねん。」そう悩む女の子に笑顔が溢れた、カウンセリングではない関わりとは?
というアメブロの記事だった。
「では、早速、読み上げていきますね。皆様よろしくお願いします!
・・・
「わたし、全然才能がないねん。」女の子は、そういった。
それを聞いた普通の大人は、「そんなことないよ!」「あなたにも良いところは絶対あるよ!」など、女の子を擁護するようなフィードバックをするかもしれない。
しかし、私のアプローチはまったく違うものだった。
「そうなんだ。それは素晴らしいね!」そう、はっきりと返答すると。
「えっ、えっ!!全然あかんのに、なんで!?」と、女の子は驚いたように答えた。
この反応から分かることは、女の子自身も「そんなことはないよ!」と、擁護してくれることを、どこかで期待していたということである。でも、その無意識で描いていた女の子自身のパターンが崩れた時に、脳は混乱する。
これは心理学で「パターン崩し」と呼ばれる手法でもある。
人間は自動思考(オートマティックソート)と言われる、自動的に染み付いたパターン(行動習慣・思考習慣)で生きる傾向にある。そしてこの女の子もまた、自動思考にハマっている。
自分では気づいていないだろうが、才能がないと嘆きながら、それを慰めてもらうという自動的なパターンの中で生きているようにわたしは感じたのだ。
だからあえて、こういった・・・
・・・
こうして、ヒーラーのようこさんと、作家のちかさんの掛け合いによるブログ朗読が進んでいく。それを聞いている他のお客様も真剣に聞き入っている。
やがて、この朗読が全て終わると最後は、仮想空間が大きな拍手で包まれていた。
「よーこさん、ちかさん、ありがとうございました!素晴らしいですね!めちゃくちゃ良かったですよ!!」
BARのマスターが、前のめりでフィードバックをしている。そして私も、選んだ記事の内容の素晴らしさと、朗読する二人の掛け合いに感動を覚えていた。
「やはり、やりたいことは、いますぐに形にしていくことが大切ですね!今日、こうして朗読を行っていただいたからこそ、今日から感動も生まれている。それによって人生に良き影響が今日中に生まれている。夢は未来に叶えるものではなくて、今から実行して育てていくものですね!」
そのマスターの言葉をきっかけに、また他のお客様が手を挙げた。
「今の朗読、本当に素敵でした。それを聞いていて、私もやりたいことが浮かび上がりました。実は、ZOOMで即興演劇をやってみたかったんです。自分で好きなキャラ設定をして、ここにいるみんなでフリートークをする。即興で役割を演じて、みんなで回して行く。それをやりたいのですが、いかがでしょうか?」
出会って間もないBARの客同士で、即興演劇をする。凄まじい展開だ。だが、大阪人としては、この展開は悪くない。そう思っていると・・・
「いいですねー!素晴らしい!ぜひ、それも今からやりましょう!皆様、自分がやりたいキャラを設定してみてください!1分くらい、考える時間を作りましょうか?」
マスターがそう投げかけたと同時に、程よくお酒が回っているメンバーは抵抗感なくこの企画を実行することを考えていた。そしてすぐに、配役が決まる。私も今回は、全力で演じるつもりだ。
「では、皆様に決めたキャラを伺っていきますね。あ、なるほど、20代のイケメン男子を演じるのですね。あ、なるほど、あなたは魔法使いさんですか。で、そこの男性の方は、どんな役にしますか?」
マスターが私に、キャラ設定について問いかける。そこで答えたことは・・・
「はい、私は、大阪のおばちゃんでいきたいと思います。」
そう伝えると・・・
「わー!それいいですね!面白そう!」
周りから、今日一番の黄色い声援が飛んできた。
大阪のおばちゃんは全国共通で、ネタとしては鉄板なのかもしれない。
「うわー、いいですねー!BARに大阪のおばちゃん来てたら、どんな風になるんでしょうね(笑)」
マスターもワクワクしている。我ながら、いいチョイスをしたと自画自賛しよう。
こうして仮想空間で即興演劇が始まることになり、この即興演劇が意外な展開を生むきっかけになっていった。
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