第3話・ヤンパラ、ヤンヤンヤン。
23時のオンラインBARの開店に向けて、ZOOMに合流する。管理人からの許可が降りて、仮想空間でオープンする「天空に最も近いエネルギーBAR・Heaven's Door」に、入店することができた。
そこには、他のお客様たちも続々と入店されている。
「少し、皆様の入店をお迎えするために待機しておきますので、もう少々お待ちください。」
BARのマスターから、そうアナウンスが入った。23時3分までは入店待ちの待機時間のようだ。その待ち時間の中で、程よい緊張感を持ちながらも、私の頭の中で一つのツッコミが生まれていた。
「天空に最も近いって、言ってるけど、天空に近い場所におるんはマスターだけであって、よう考えたらお客様にはまったく味わうことができん情報やなぁ・・。まあ、それはそれでええか。」
人は空白の時間になると、思考が働くものである。そうこう考えているうちに時間が経ち、マスターからのアナウンスが再び入っていった。
「本日は、天空に最も近いエネルギーBAR・Heaven's Doorにご来店いただきまして、誠にありがとうございます!それでは皆様、例の入店挨拶は覚えているでしょうか?早速、投げかけたいと思います。Are you happy now?」
マスターがそう投げかけていくと。
「Yes! I'm Happy Now !フー!!」
と、元気よくレスポンスする女性がいた。
「おいおい、フー!とか、アクションつけて言ってるよ・・・。フー!とか、決まりでなかったよな。すごいな・・・。」
参加している女性のエネルギーに圧倒された私だったが、他を見渡してみると、物静かに参加されている方もいる。それを見て少し安心をした。それぞれのペースで参加して良いのだろう。
「みなさま、ありがとうございます。では、今宵も交流を楽しみたいと思っておりますので、せっかくなので自己紹介をしていきましょうか!どこから来たのかと、呼んで欲しい名前や愛称など、自由に自己紹介していきましょう!」
いきなり最初から、BARのお客様同士が交流する。リアル店舗では、まずない流れだろう。だが、オンラインBARだからこそ、そこに違和感を感じることなく自然に自己紹介が始まっていった。
「福島から、参加しています。今日は楽しみです!」
「福岡から、参加しています。私も今日は楽しみです!」
自己紹介を聞いていくと、日本全国から参加者がいる。どこからでも参加できるのは、オンラインBARの強みかもしれない。和気藹々と自己紹介が進みながらも、ふと見渡せば、私以外は全て女性であることに気づいた。
男性は、私一人。ちょっとアウェーかもしれない。が、周りの女性陣はそんなことは一切気にすることもない雰囲気である。
テンポよく自己紹介が進みながら、次の女性に進む。すると・・・
「私は、星から舞い降りてきました。よろしくお願いします!」
その言葉に、私は耳を疑った。
「えっ、!?星ですか?」
しかし、周りは特にツッコみを入れることもなく、淡々と自己紹介が進んでいく。さらに次の瞬間・・・
「私は、魔法の国からやってきました!ヤンパラヤンヤンヤン!!」
「えっ、えっ、魔法の国って、ほんで、ヤンパラヤンヤンヤンって、久しぶりに聞いたわそのフレーズも!ほんで自己紹介で、ヤンパラヤンヤンヤンって、言えるメンタルの強さの秘訣を聞きたいわ!!!」
わたしは心の中で、そんなツッコミを入れながらも、自分の自己紹介がまわってくることに焦りを感じていた。
「いやもう、これ、みんなインパクト強すぎやろ。なんか、オロナミンC買って、元気ハツラツ!オロナミンビアー!!とか、言おうと思って掴みはOKやと考えてた自分が恥ずかしいわ・・・。どうしよ、どんな自己紹介しよ・・・。」
想定外の意味不明な不安に苛まれた私は、苦し紛れにも頭を振り絞っていきながら、大阪人としての誇りとインパクトの強い周りのメンバーに負けたくないという気持ちも両立し、次に来る自己紹介のタイミングに向けて思考をフル回転させていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます