第2話・オミクロン株じゃない、オロナミンCのお酒と共に。

今日は朝からハードな1日だ。


午前中から急遽仕事が立て続けに追加になって、夕方まで残業が続くのが確定してしまった。今夜は23時からオンラインBARに参加するのに、この忙しさは正直想定外。


「あー、もう、、、23時のBARまでに、ちょっと一息休憩したかったのに、これはキツいなぁ・・・。」


大阪難波グランド花月の前を歩きながら、今日に限って予定が詰まりすぎているスケジュールにため息が出る。ふと、ドラッグストアの前を通ると、特売で「オロナミンC」が売っていた。


「オロナミンC、懐かしいなぁ・・・。そうだ、今夜のオンラインBARは飲み物持参だったから、これ買っておこうかな!今日はちょっとハードで疲れ気味だし、ビールにオロナミンCを入れて「元気ハツラツ!オロナミンビアー!!」で、夜は乾杯したら面白いかも。どんな人たちが来るか分からないし、大阪人としてのツカみがあったほうが場が和むだろうなぁ。」


たまたま通りかかったドラッグストアで見つけたオロナミンC。今夜はファイト一発で、深夜まで乗り切るために、衝動買いをしてレジに並ぶ。


「あとは、おつまみがあったほうがいいな。6Pチーズと・・・。そうだ、おでんを買っておこう。大根多めで。おでんと言えば大根。あとは、もち巾着も。」


普段ドラッグストアに寄ることはあまりないが、最近は食品も充実している店舗も多くなっている。オンラインBARに参加するとはいえ、家飲みするのも久しぶりだったので、買い物をしながら何気にちょっとしたワクワク感を持っていた。


そういえばコロナ禍を経て、めっぽう減ったのが外食である。それまでは、週に何回も外食をしていたが、この1年半でそれはほぼなくなっていった。友人や職場の仲間と飲みに行く機会もほぼなくなっていたので、オンラインBARとは言え誰かと一緒に飲みながら過ごせることは、意外と嬉しいかもしれない。


「よし、これである程度、飲み物とおつまみは揃ったな。あとは仕事をできるだけ早く終わらせて、23時に備えていこう。」


想定外に長引いた仕事もひと段落したので、自宅に直行して夜の準備を開始したい。といっても、家から出るわけではないので、服装はそほど気にしなくてもいい。これは、オンラインならではの利点かもしれない。


京都のお土産でもらったエコバックに入れた商品を片手に帰路へとつく。横断歩道で信号待ちをしていると、ビルの街頭テレビでニュースが流れていた。


「今日未明、新型コロナウイルスのオミクロン株感染者が確認されました。」


デルタ株の次は、オミクロン株。いつまでこのイタチごっこは続くのだろう。いい加減、この1年半以上も続いているコロナ騒動には、正直飽き飽きしている。


信号が青になったのを確認すると、早歩きで駅に向かっていった。


「いやー、これは、今日は帰りギリギリになるなぁ・・・」


そうやって焦っている時ほど、逆に引き止められる何かが起こるものだ。案の定、横断歩道を渡った先で、二人組の女性に呼び止められることになった。


「あのぉ〜、この病院までタクシーで行きたいのですが、ちょっと方角が分からなくて、初めてきた場所で迷っていて・・・。少し教えていただけないでしょうか?」


見たところ、親子といったところだろう。初めてきた場所で土地勘もなく、困り果てている様子である。


「わかりました。スマホで調べますね。何病院ですか?あ、そうですか、では地図アプルでルート検索してみますね。あ、出ました。ここの病院であってますか?それなら、今目の前の道からタクシーに乗って真っ直ぐ進と4分ほどで着きますよ。」


我ながら親切丁寧に道を教えると、相手もとても喜んでくれていた。うむ、良いことをした。とても良いことをした。


人助けをした自分に酔いしれながらも、そんなことをしている暇もないと我にかえる。早く帰らないと、23時のオンラインBARに間に合わないではないか。


早歩きを、小走りにシフトチェンジして、そこからは電車に素早く乗ることだけを考えていった。そしてギリギリだが、22時30分に自宅へ到着する。


「えっと、えっと、とりあえず、おでん温めてと。そして、エビスビールにオロナミンCを注いでおいて、元気ハツラツ!オロナミンビアー!!も完成っと。あとはパソコンを立ち上げてと。ふーっ、なんとか間に合ったぁー!」


こうして準備が完了した私は、ZOOMリンクをクリックして、23時からのオンラインBARへと合流をすることができた。

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