謎解きはお味噌汁を作る間に ~孫は未来の名探偵?~

黒銘菓(クロメイカ/kuromeika)

第1話

 「ばーたん、おはよーございます。」

 「あー睦月むつき、おはよう。早いね~」

 朝の五時。孫の睦月はもう起きていた。

 「ばーたん、ブクブクしてください。」

 「はい、待ってね。」

 ペコリと頭を下げた孫を見て、ケトルにお湯を沸かす。

 ご飯やおかずはもう作った。あとはお味噌汁だけ。

 『朝ごはんのおかずとご飯はわたしが、お味噌汁は交替で作る。』

 それがウチのルール。

 孫の睦月はまだ幼稚園だからと思っていたんだが…

 『ぼくもやる!』


 年金でケトルを買った。


 お湯を待つ間。

 ウチにはお味噌汁以外にもう一つ、ルールがある。

 「くろいリュックのおにーさんがね、ツルばーばのピンポンして、はしってたの」

 お味噌汁を作りながら私に気になった事や不思議な事を話すというものだ。が…

 (小学生が鶴さんの所でピンポンダッシュかね?また下らん事を…)

 孫に真似をされては大変だ。注意をしておかないと…

 「でね、たきばーば と りゅうじーじ と あざみねーねのピンポンして、いなかったの。

 したらおにーさん、おえかきして、はしって、おまわりさんにいたおじさんにおえかきみせてたの。

 でね、おまわりさんのおじさんがかーたんがつかってるかみのおかねあげたの。」

 (ピンポンダッシュして、警官と金のやり取り?どういう事だい?)

 「リュックのお兄さんは、お姉ちゃんが持ってた赤いリュックを持ってたのかい?」

 「ちがう!くろ!じゃないの!おとななの!」

 (…大人がピンポンダッシュ?金?もしかして…)

 「睦月や、おまわりさんのおじさんはどんな服だったかい?」

 「わかんない。。」

 ここに来て確信を得た。

 孫は空き巣の下見を目撃していた。

 ピンポンダッシュは家主の不在状況確認の為。居ない時間を狙って事に及ぶ気だね。

 まだ騒ぎが起きてないところを見るとこれからやる気だ。

 さて、最寄の署に連絡して…

 「ばーたん、これ。」

 睦月が渡したのはクレヨンで描かれた絵?幾つもの直線が交差して描かれたこれは…

 「地図かい!?」

 「おまわりさんのおじさん、そこにいる。おじさんはじーじとばーばとねーねをいじめるんでしょ?ばーたん、たすけてください。」

 泣きそうな目で頭を下げた。

 「任せな睦月や。ばーたん、強いから!」


 元部下の警察署長に連絡。犯人は直ぐ捕まった。

 「睦月君、お手柄だ!」

 「やった、ほめられた。えへへへへへ。」


 ウチの孫、至高。








 犯罪者が戦慄する名刑事。

 その眼は悪を射抜き、正義を直視する。

 彼の名は雨宮睦月。

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