最終話:私の自慢の旦那様!

その後、屋敷にいるゴブリンたちも、皆病気が完治した。

右を見ても左を見ても、とんでもない美男美女が揃っている。

そして、私たちはと言うと……。


『待てよぉ~、アイカルゥ~』


「捕まえてごらんなさぁ~い」


毎日、キャッキャウフフしている。

そんなある日、一通の手紙が届いた。


『アイカル様、お手紙でございます』


「ありがとう、ラトーバさん。誰からだろう?……ゲッ!」


『どうしたの、アイカル』


「妹とケイハーク様、いや、ケイハーク氏からですわ」


『そ、そうか……』


あの性悪な妹のことだ。

どこまでも、私をバカにしたいのだろう。


「とりあえず、中身を見てみますわ……え!?」


『どうしたんだい?』


私は手紙を見せた。



姉上様、数々のご無礼をお許しください。

私を助けてください。

エルフの国から国賓が、ルドウィッチ王国に来ました。

宴の最中、エルフ姫の持病が再発し、私が『浄化』スキルで治そうとしました。

ところが、どうしたわけか酷く悪化してしまったのです。

責任を取れと、私とケイハーク様は死刑を宣告されました。

姉上様が昔お話くださった、スライムの病気を治したことを思い出し、もしかしたらと筆を執った次第です。

どうか、どうか私どもをお助けください。


至急連絡乞う

クヨジア・カラベッタ

ケイハーク・チャーライ




『こ、これは……』


手紙は殴り書きだったので、本当に切羽詰まっているのだろう。

私は正直、複雑な気持ちだった。

しかし、クヨジアは実の妹だ。

見殺しにすることはできない。


「シンシさん、力を貸していただけますか?」


私たちは、大至急ルドウィッチ王国に向かった。




わずか一日足らずで王国に着いた。

ラトーバさんが、馬車を飛ばしてくれたおかげだ。


「ねえ、あの人すごくカッコよくない?」


「どこの国の王子様かしら?」


「エルフよりハンサムね」


周りの女性たちが、シンシさんに色目を使っているのが気になるけど、私たちは急いで王宮に向かった。

事情を話し、中に入れてもらう。


「クヨジア!」


今まさに、クヨジアとケイハーク氏が、首を斬られようとしているところだった。


「お、お姉さま!?来てくださったんですね!」


「アイカル!」


二人はボロボロで、かなり衰弱していた。


「貴様たちは何者だ!?」


王様だ。

私たちは跪いた。


「これは失礼いたしました。私はアイカル・リゴンブと申します。そこにおりますクヨジアの姉でございます」


『私はシンシ・リゴンブと申します。“辺境の森”にて、屋敷を構えている者です』


「おい!今すぐ、こやつらを追い出せ!」


衛兵たちが近寄ってくる。

私は必死に叫んだ。


「王様!クヨジアより、お話は聞いております!私の『不浄』スキルなら、エルフ姫のご病気を治せる可能性があります!」


衛兵たちの動きが止まった。

王様の方を伺っている。


「……貴様、ふざけているのか?国中の医術師を集めても、回復しないのだぞ!」


『王様、恐れ多くも申し上げさせていただきます。私は……ゴブリンでございます』


ゴブリンと聞いて、その場がざわついた。


「ゴブリンが、そんな見た目なわけないだろう!いや、そんなことはどうでもいい!さっさと出て行け!」


『アイカルはモンスターの病気を、確実に治せる力があるのです!私たちは皮膚病のため、醜悪な外見だったのです!』


「お願いします、王様!私にやらせてください!きっと姫様の病気を治してみせます!」


私たちは、必死にお願いした。


「……いいだろう。ただし、上手くいかなかった時はどうなるか、わかっているだろうな?」




私たちは、姫が寝ている部屋に行った。

エルフがたくさんいる。

一番偉そうなエルフが言った。


『ルドウィッチ王、戦争は回避できませんな』


「この度はなんとお詫びしたら良いのか……。モンスターの病気が治せるという、医術師を連れて参りました」


『ふん、どうだか。ぜひ、やって頂きましょうか』


エルフ姫は息が辛そうで、とても熱が高い。

私は姫の胸に手をあてた。

意識を集中していく。

さすがに緊張する。

ふと隣に、シンシさんが来てくれた。


『アイカルなら大丈夫。今までどおりやればいいのさ』


(ありがとう、シンシさん…………)


私の手が光だした。

すぐに、エルフ姫の呼吸が整っていく。

やがて熱が冷め、体温も元に戻った。


『あれ……?ここはどこですの?』


エルフ姫の目が覚めた。

もう大丈夫だ。


『『『やったああああああああああああ!』』』


お付きのエルフたちが、バンザイをして喜んでいる。


「な、なんということだ……アイカル嬢……どれほどお礼を申し上げたら良いか……」


「ああ!お姉さま!お姉さま!ありがとうございます!」


「アイカル!君は命の恩人だよ!」


クヨジアとケイハーク氏は、私にしがみついて涙していた。


「……離してください」


私は二人を、やんわりと引き剥がす。

クヨジアはすぐ、エルフ姫に謝りにいった。


「アイカル、とても美しくなったね。どうだろう?また私の元に戻って来ないか?」


ケイハーク氏はこんな時にも関わらず、相変わらずの調子だった。


「……戻るわけないでしょう。私には、こんな素晴らしい旦那様がいるのに」





やがてゴブリン屋敷には、色んなモンスターが訪れるようになった。

どんな病気もケガも治すと評判で、アイカルとシンシは、モンスター界で有名な夫婦になっていく。

新婚旅行先では、太古の竜の病気を治したりと大活躍。


さてさて、アイカルの評判が魔王様にまで届くのは、また別のお話……。

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『呪われた聖女』と言われている、私の結婚相手は【ゴブリン伯爵】です 青空あかな @suosuo

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