「元婚約者の勇者に柱に縛られて魔王城の最深部に置き去りにされましたが、超絶美形の大魔王様に助けられました」
まほりろ
第1話「勇者に婚約破棄され魔王城の最深部に置き去りにされました」ヒロイン視点
「エレナ貴様との婚約を破棄する! お前の役目は終わりだ」
「待って! グレゴア!」
「庶民出身の卑しい聖女の分際で、貴族の出であるの俺の名を気安く呼ぶな!」
「ごめんなさい……でも、私たち婚約者としてうまくやってきたじゃない!」
「カイテル王国の国王に命令されたから仕方なく婚約しただけだ! 誰が好き好んで聖女の称号を持っているだけの庶民出身でパッとしない見た目のお前なんかと婚約するかよ! 冒険が終わったら俺は隣国ブルーナ帝国の王女と結婚するんだ! カイテル王国なんて小国も、庶民出身の聖女も、魔王を倒したら用済みさ!」
「そんな……酷い!」
聖女の力を利用するだけ利用して捨てるなんて!
「太陽のように輝く金の髪に海のようにきらめく青い目を持ち国一番の美形と褒め称えられる侯爵令息の俺と、田舎の村出身で冴えない焦茶色の目と瞳の平凡の容姿に幼児体系のお前とでは、もともと釣り合いが取れてなかったんだよ!」
「あんまりだわ!」
確かに私は美人じゃないし、スタイルも良くないし、実家は貧しい農家だけど、聖女の称号を授かってからは一生懸命努力してきたし、グレゴアと婚約してからはグレゴアの回復を最優先して、グレゴアを支えてきたつもりだったのに、そんな言い方って。
「本当のことだろ! 俺のような美男子には美しい姫こそがふさわしい! ブルーナ帝国の皇女様は容姿端麗、スタイル抜群、成績優秀、立ち居振る舞いも優雅でしとやか、容姿、家柄、教養どれをとっても申し分ない! 勇者であり英雄である俺の伴侶にこれほどふさわしいお方はいない!」
私の名前はエレナ、カイテル王国という小国の小さな村出身の聖女です。カイテル王国の国王陛下の命令に従い、勇者パーティーの一員として今日まで働いてきました。
侯爵家出身で勇者の称号を持つグレゴアとは、婚約者として今までうまくやってきた……つもりでした。
ですが相思相愛だと思っていたのは私だけだったようです。
魔王を倒した後、私はグレゴアの命令で傷ついた仲間に回復魔法をかけました。通常なら傷薬で済ませるようなかすり傷まで治療したので、私の残りマジックパワーはゼロ。
マジックパワーの尽きた私は勇者グレゴアと戦士ベアナードによって、魔王城最深部の柱に縄で縛り付けらてしまいました。
手も足も出ない状況になって、初めて仲間に裏切られたのだと気づくなんて、私は相当の間抜けです。
「これを飲め!」
グレゴアが見るからに怪しい小瓶を鞄から取り出した。
手のひらに収まるサイズの小瓶の中にはドロリとした液体が入っていた。
あの瓶の中身がろくでもない物だということは、愚かな私にも理解できました。
口を固く閉ざし必死に抵抗しましたが…。
「ベアナード! エレナの鼻を塞げ、口をこじ開けろ!」
「任せとけ!」
ベアナードに鼻を塞がれ、息が出来なくなり口を開けたところに、グレゴアに無理やり瓶に入った液体を注ぎ込まれました。
「ぐっ……ガハッ……!」
なんでしょう……苦くて、どろどろしていて、気持ち悪い。吐き出したいのですが、ベアナードの大きな手に口を塞がれているのでそれもできません。
ついに私は奇妙な液体を
「それはブルーナ帝国が開発した【飲める
グレゴアが口の端を上げ邪悪な笑みを浮かべました。
【飲める非常灯】なんて恐ろしい薬なの!
「魔王を倒しても魔王城内にはモンスターが残っているからな。残り少ないMPで脱出するには誰かの犠牲が必要なんだよ。俺たちが魔王城を脱出するまでせいぜい
グレゴアが吐き捨てるように言い、
「マジックパワーの尽きたお前にはこれくらいの使い道しかないからな」
ベアナードが私を見下しゲハハハと下品な笑い声を上げた。
二人はニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら、魔王の部屋を出て行った。
一人残された私は縄を解こうと身をよじりました。ですが動けば動くほど縄が身体に深く食い込み、肌が傷つくだけの結果に終わりました。
そのうちにだんだんと私の体が淡い緑色なの光り出し始めました。それと同時にモンスターが魔王の部屋にぞろぞろと入ってきて、私を取り囲むように集まりだしました。
魔王の部屋に入って来たのはドラゴンにトロールにワイバーン……それぞれ十体ずつ、全部で約三十体。
柱に縛り付けられた状態でMPはゼロ、非力な私の力では縄を切ることは不可能、万が一自力で縄を切れたとしても、MPゼロの状態で三十体のモンスターから逃げ切れるとは思えません、絶対絶命の大ピンチです!
私ここで死ぬのね……父さん、母さん、先立つ不孝をお許しください。
回復魔法を教えてくれた神父様、文字の読み書きを教えてくれた村長様、絶対に生きて村に帰ると誓いましたが、約束を果たせそうにありません、ごめんなさい。
親切だった村の人たち、魔王を倒したら王様にご褒美をもらって、王都で美味しいものや美しい反物や綺麗なアクセサリーをたくさん買って帰るねって言ったけど、その約束を守れそうにないわ。
気がつくと私の目の前に一番大きなドラゴンが迫っていた。
ドラゴンが巨大な口を開ける、鋭く尖った歯がぎっしりと生えている、あれに噛まれたらただでは済まない。背筋を冷たい汗がつたう、私……ドラゴンに食べられて死ぬのね、全てを諦め私はぎゅっと目を瞑った。
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