第5話「愛しき人との再会」大魔王視点
「魔王がいない……倒されたのか?」
エレナと再会できた喜び抑えようとしたら、白々しいセリフになってしまった。
「魔王は倒されているし、モンスターが集まってはしゃいでいるし、可愛らしいお嬢さんは柱に縛られているし、いったいこの部屋で何があったのかな?」
今すぐ走っていってエレナを拘束している縄を柱ごと破壊したいが、それをすればエレナを驚かせてしまう。エレナに駆け寄りたい衝動を抑え、ゆっくりとエレナに近づく。
「大丈夫ですか? 麗しいお嬢さん」
私はエレナの前まで歩み寄ると、その場でひざまずき、エレナの手を取り手の甲に軽く口づけをした。
途端にエレナの頬が赤く染まる。
「へっ……、平気…れしゅ……!」
言葉を噛むエレナもキュートだ。
そういえば本来の姿でエレナに会うのはこれが初めてだ、自己紹介をしておかなければ。
「私の名はフィリップ、大魔王をしています」
「あっ、これはどうみょ……わたしゅは聖女えるにゃ」
エレナは私が村を去ったあと「聖女」の称号を授かったようだ。平凡な村の農家の娘が高い魔力を持っていることに疑問を感じていたが、聖女の素質をもっていたのなら頷ける。
ここには二人の仲間とともに魔王討伐に来たといったところか。
エレナには後で仲間の名前と特徴、なぜ柱に縛り付けられたのかを詳しく教えてもらわなくてはな、そいつらにたっぷりお礼をするために。
「フィリップ様は大魔王なんです……か」
「お久しぶりですね、エレナ。再会して早々なんですが、私と結婚してください!」
エレナは耳まで真っ赤に染め、
「ひゃい、喜んで……!」
と言ってほほ笑んだ。
相思相愛だったことが嬉しくて、私はエレナを抱きしめた。
「ありがとうエレナ! 嬉しいよ!」
エレナをお姫様抱っこして、その場で何度もくるくると回った。
「エレナ、愛してる!!」
私は本来の姿に戻って初めてエレナの唇に己の唇を重ねた。
犬の姿だったときは、口づけ、添い寝、一緒にお風呂に入るのが当たり前だったから、エレナの体についてはよく知っている。
エレナのほくろの位置も、寝相の悪さも、耳が弱点なことも……なんでも。
唇を離すと、エレナは顔から湯気を上げ、気を失ってしまった。
エレナ、私と再会するまで初々しいままでいてくれてありがとう。
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