第6話・最終話「Win-Win」大魔王視点
一月後、私は魔界の教会でエレナと結婚式を挙げた。
エレナは【飲めるラブ非常灯】のことを話してくれない。
エレナは私が【飲めるラブ非常灯】の存在を知らないと思っているようだ。
魔王の部屋に【飲めるラブ非常灯】の空瓶が落ちていて、ラベルに薬の効果も書いてあったのに、なぜ私が【飲めるラブ非常灯】の存在を知らないと思っているのだろう。でもそういうお間抜けなところもエレナらしくて好きだ。
エレナは【飲めるラブ非常灯】の効果で、私がエレナを好きになったと誤解しているようだ、隠していても分かる、エレナは素直だから考えていることがなんでも顔にでるから。
大魔王である私に【飲めるラブ非常灯】は効かない。人間の作った薬ごときで大魔王の心は揺れたりしない。
私がエレナを愛しているのは薬の効果ではなく本心からだ、犬の姿の時に一緒に暮らしていた頃からずっと、私はエレナを心から愛している。
だが【飲めるラブ非常灯】の効果で私の心を操っていると思い込み、罪悪感に苛まれるエレナの姿が愛おしいから、あと百年は内緒にしておこうと思う。
「私が生きている間はモンスターたちに人間を襲わせないで」
そう言って泣きそうな瞳で私にお願いしてきたエレナは可愛かった。
私は魔王に人間界の侵略を命じた叔父とは違う。人間が魔族や魔界やモンスターに干渉してこないのならば人間を襲う理由はない、エレナの願いはできるだけ叶えてあげたい。私はエレナからのお願いを二つ返事で了承した。
エレナは気づいていないが、エレナの食事には寿命を伸ばし若さを保つハイエーテルを混ぜている。そのことにエレナが気づくのはおそらく十年以上先、その頃にはエレナの寿命は千年以上伸びているだろう。気づいた時にはもう元の体には戻れなくなっている、ハイエーテルが食事に混ぜられていることに気づいたときのエレナの反応が楽しみだな。
エレナが【飲めるラブ非常灯】の効果について言わないから、私もエレナの食事にハイエーテルを混ぜてることを教えてあげない。
エレナが私より先に死んでしまうなんて耐えられない、エレナには魔族と同じ寿命を得てもらいたい、私はエレナとずっと一緒にいたい。
ハイエーテルを摂取し続ければ、エレナは若く美しい姿をあと二千年は保てる、エレナが生きている間私はモンスターに人間界を襲わせないから人間界の平和は保たれる、私はエレナとずっと一緒にいられる、双方にとって好都合だろう?
――終わり――
「元婚約者の勇者に柱に縛られて魔王城の最深部に置き去りにされましたが、超絶美形の大魔王様に助けられました」 まほりろ @tukumosawa
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