第2話「【飲めるラブ非常灯】」ヒロイン視点
しかし……いくら経っても体に痛みを感じない、ドラゴンが襲ってくる気配もない。
恐る恐る目を開けると間近に迫っていたドラゴンが長い舌を伸ばし、私の顔をぺろりとなめた。
「ひゃっ……?!」
ドラゴンに舐められた瞬間背筋がゾクリとした。
じっくり痛ぶってから食べるパターンでしょうか?
他のモンスターたちの様子が気になり、部屋の様子を伺う。モンスターたちは私を取り囲んでいるだけで、襲ってくる気配はなかった。
それどころかモンスターたちは仔犬のように目をキラキラさせ私を見つめている……これはいったいどういう状況なの?
そういえば子供の頃村に迷い込んだ仔犬にパンを与えたらこんな目をされたわ。
仔犬が家までついてきてしまったので仕方なく家で飼った、全身銀色で毛並がよくて、賢い犬だったわ。
「フィ」と名付けて一緒に遊んだ、寝るときも、遊ぶときも、お風呂に入るときも、いつも一緒だった。
フィが家に来て数年経ったある日、フィと私は森に散歩に出かけた。そのときフィとはぐれてしまって……そのあといくら探してもフィは見つからなかった。
ここにいるモンスター達も私に飼ってほしいのかしら? 犬や猫じゃないから飼うという表現は不適切かもしれないわね、仲間にすると言った方がしっくりくるわ。
「もしかしてみんな私の仲間になりたいの?」
その場にいたモンスター全員が嬉しそうに首を縦に振った。
グレゴアは【飲める非常灯】は魔物を呼び集める効果と、魔物をいきりたたせる効果があり、魔物は飲んだ人間に敵意をいだきどこまで追いかけ続ける……と言ってたけど、少なくともここに集まったモンスターたちからは敵意を感じない。
グレゴアの【飲める非常灯】の説明が間違っていた? もしくはグレゴアが【飲める非常灯】と間違えて、別の薬を私に飲ませてしまったか……?
グレゴアが捨てていった【飲める非常灯】の瓶が床に転がっていたので、私は瓶のラベルに目を凝らした。
ラベルには【飲める非常灯】ではなく【飲める
【飲める
【
この部屋に集まったモンスターは、【飲めるラブ非常灯】の効果で、私を好きになってしまったということかしら? そう考えると一応この状況に説明がつくわ。
と……とりあえずモンスターに頭から食べられずに済みそうね。
私を拘束している縄をどうにかすれば、モンスターに襲われずにここから逃げられるはず。
モンスターにお願いしたら縄を解いてくれそうだけど、この部屋には大型のモンスターしかいない。モンスターの大きな爪や牙で、縄ごと私の体まで切断されそうで……恐ろしくてうかつに頼めない。
どうしたものかしら……。
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