第3話 12時乗、1時降。

 まるでジェットコースターに乗ってるみたい。あんなの一時間乗ってられないし、そんな長い時間乗り続けるコースターなんてないだろうけど。ドキドキしながらゆっくり上っていく。急に落ち込んで急降下したり。


 新幹線を降りても君の車に乗ってお家へ行く。駅で待ち合わせ。柱にもたれかかってる、黒ずくめの君が遠くに見えて、手をあげた。嬉しくて小走りになっておしゃれしたブーツが滑った。


 顔が燃えるように熱くなった。またジェットコースターのように心がぐるぐるもうスピードでいったり来たりする。転ばなかったけどつまづいた、ああ少しだけヒールのあるブーツにしたの、やめればよかった。


 またゆっくり歩いて、人の中をすり抜けて、君への道を歩く。君から見えてる私はどんな風だろう。

 君は言わないのに、私は勝手に想像してしまう、落ち込みそう。



「久しぶり」



 電話で聞いていた声が、


「久しぶり…見た?」


「俺なんて外で転んで雪はらってきたから」


「え、怪我してない?」


「はは、してない」


 私たちは人前でぎゅーなんてしないのだ。だから隣を歩くだけだけど、


「転ばないでね、支えきれないから」


「転ばないでね、一緒に転んじゃうから」


 近くで歩けるだけで、それだけで嬉しい。電話口だった声がこんなに近くで、聞こえる。寒いからいっそう君の体温があたたかくて。


 無事私はジェットコースターを降りて、君の車に乗り込んだのだった。きっと何度も不安になる、その度乗りかえよう。

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