12時発、1時着。
新吉
第1話 12時始、1時終。
1時間は長いですか、短いですか?私は短いと思うけど。君は長いという。君と電話をしているとあっという間に過ぎてしまう。話しに終わりはなくて。まあ終わらせられないこともないけど。ただ君とつながってるのを感じたいだけ。
電話を始めるのは君からが多いかな。終わりにするのはどっちもどっちかな。最近は寒いから布団の中で電話をする。ふと窓の外からガタンゴトンが聞こえてくる。
「電車の音がしてる」
「駅近くないよね」
「うん。これがほら、あのなんだっけ、遠くの線路でも…放射冷却のせいだよ」
「今調べたな」
「別にいいでしょ」
遠く離れていても聞こえる。つながる。話せる。世の中は大変便利になりました。そのうちに世の中は大変なことになりました。人と人とが距離を置かなくてはいけなくなりました。もともと遠距離だったこの関係はいったいどうなるのか。ドキドキはらはら。
「ま、変わらないよねうちらは」
「そもそも電話ばっかりだもんね」
「声、落ち着く」
「そらよかった」
とはいっても、会えない。
スケジュール帳の約束の日を飾り立てて楽しみにしていた気持ちが行き場をなくす。会いたいと思っていたのは私だけなの?なんて君が忙しいのは重々承知。愚痴を言い合ってバイバイ。長くなればなるほど、また会う日が楽しみ…だけど怖い。手放しで喜べない。だんだんと思いが強くなる。人に会うことはなにも怖いことじゃない。それをまた思い出したい。次の約束の日までに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます