第6話 12時上、1時下。
時計が壊れている。針が上れなくて困っている。文字盤の9のあたりから上に行けずに、カチカチと悲しそうに訴えかけていた。電池を買わなくてはいけない。
掛け時計がなくてもスマホも腕時計もある。だから僕は放置してうつむいてばかり。ああ別に歌を聞いたり呟いたりして、いろいろと忙しいからだ。
それでもふっとした時、掛け時計を見上げるのだ。
見上げられた掛け時計はいつもと変わりなくて、それでも時代とホコリがかかっている。電池ひとつで動く安いやつね。それでも自分だけの部屋に、自分の好みの時計を掛けた時は嬉しかった。部屋が完成した気がした。まあ今は物で散らかってるけど。
大掃除までずるずると時計の電池をほったらかしにしていた。もうカチカチという訴えすらない。あまり見ないからといってさすがに電池の切れた時計のまま年越しするわけにはいかない。
テーブルに上がって、掛け時計を外す。ホコリをとって、電池をとって入れ換えて、時間を合わせる。お、ちょうど一時だ。スマホと見比べて終了。もう一度掛ける。これでよし。困っていた針が嘘のようにスムーズにカチカチと時を刻んでいく。
ただそれだけのことなのに、今の僕にはせいいっぱい。それだけでも僕の中で何かが動き出した気がして、少し気持ちが楽になった。
ああ
時計の音が嫌になっていたことを深夜に思い出した。ごめんね時計。気分の上がり下がりで、電池を外してしまって。またいつか、入れてあげる。
12時発、1時着。 新吉 @bottiti
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