第4話 12時発、1時着。

 久しぶりの人混みのなか、思うことはいろいろある。時間を気にしながら新幹線を待つ。緑色のやまびこがやってくる。私を乗せてくれる、あの人のところへ運んでくれる。


 一時間ほどで到着予定だ。時々ご当地弁当を食べてみたりする。駅の中は混んでいて、切符以外は何も買わずホームで並ぶ。指定席に乗ったのは数えるほどで、たいてい自由席。混んでいなければ本当に自由な新幹線の中。寝てしまうのだけど、今回はドキドキしてダメだった。なにも緊張することないのに、なんて言われても無理。2年で私はずいぶん老けてしまった気がする。おしゃれもせいいっぱいしたけれど、冬は寒いからどうしても着ぶくれてしまう。メイクもしてもマスクをする。困ったなあ、こんなにネガティブなることあんまりないのに。どんどん不安になっていく。


 楽しみと不安がおりまざっていたのに、どんどん不安が追い越していく。そういうとき君からもらった言葉を思い出す。好きだよの言葉を繰り返し思い出す。その君に会いに行くのに何を怖がっているんだろうか。変わった自分が怖いのか

 変わった相手が怖いのか

 変わらないものなんてないのに


 新幹線のトイレの手洗い場の鏡、自分の顔がひどくてすぐ離れた。


 元々遠距離だったからうまくいかない不安なんていくらでもあった。オンラインで顔を見合わせても、結局そのあとかけたときは電話に戻った。顔も見たいけど声が聞きたかった。電話の方がよく話せる。お互いに。

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