14・日曜日【真相・サイドB】
夜が明けてから、数時間が過ぎた。だが、部屋の中に日光は差し込まない。灯りは6本のロウソクだけだ。
もはや林に、時間の感覚はなかった。生贄を飾り終えた林が、床に座り込む。自分の腕にケタミンを注射して満足げなため息をもらした。
「終わったぜ……悪魔さんよ……。美しいと思わないか……?」
林は、悪魔からの労いの言葉を期待していた。
神と戦う力を全身に満たした、力強い〝冥府の王〟の言葉を――。
だが、返事はない。不自然な沈黙が、部屋の中に淀む。
「おい……何か言えよ……。会心の仕上がりなんだからよ……」
林は、心細げな目であたりを見回す。
儀式を始めてから悪魔の声が聞こえなくなったことに不意に気づく。女の体に焼印を押すことに没頭していた林の頭からは、悪魔の存在はすっかり忘れられていたのだ。
気づくと、悪魔の気配そのものまでが消え去っていた。
「おい……なんだよ……どこ行ったんだよ……」
不安に満たされた沈黙が、さらに続く……。
と、女が不意に体を起こした。ゆっくりと立ち上がる。
林は驚いて仰け反り、息を呑んだ。わずかに退く。
「な、なんだ……急に……」
女が勝手に動くことは、ここ数日間なかったのだ。林にとって女は悪魔の玩具に過ぎず、自分の意思を持つことなどあり得なかった。
一瞬、悪魔が女に乗り移っているのだと考えた。
だがその願いも、あっという間に断ち切られる。
悪魔を思わせるような振る舞いは、全く感じられない。目の前に立った女が、じっと林を見下ろす。林をあざ笑うかのように、小さなため息をもらす。女から漂うオーラは、林がこれまでの人生で常に受けてきた〝常識的〟な反応だった。
秩序を乱すアウトサイダーに向けられる、冷たい視線――。
暴力的だからはじき出されるのか、はじき出されるから暴力的になるのか――。
理由はどうあれ、その視線が林の周囲から消えたことはない。
侮蔑、嫌悪、敵意、無視――。
林を追い詰めてきた息苦しい世界が、唐突に目の前に膨れ上がっていた。林を救うはずの悪魔は、どこにも感じられない。
と、女は林を無視して窓際に向かった。
今までと違って動きが素早い。だが、足元はおぼつかない。麻薬で朦朧としているというよりは、視力が弱いようだ。ベッドの支柱で体を支えながら黒い防水シートを手探りで掴み、引きちぎるように外す。止めていた画鋲が部屋中に飛び散る。そして一気にカーテンを開いた。
窓の外には、雪に覆われた真っ白な丘の風景が広がっている。
全身をくまなく悪魔の刻印で焼かれた裸体が、光を浴びる。
逆光の中の女を見上げた林が、それでも必死につぶやく。
「勝手なことを……儀式がぶち壊しだ……」
振り返った女は、笑ったようだった。
「何が儀式よ、このマヌケ」
林はキョトンと女を見つめる。全裸の上にコスプレ用の安っぽいローブを纏った姿が、遊戯に疲れた幼児のようにも見える。
「悪魔が……儀式を……やれって……」
すがりつくような林の表情を、女が鼻先で大げさに笑い飛ばす。
「悪魔なんて、いない。ここにいるのは、わたしとあんたと、3人の死体だけ。お芝居はこれで全部終わったのよ」そして女は、再び大きなため息を漏らした。「ようやく……終わったのよ……」
林のローブのフードが後ろに落ちた。眉も髪も剃っている姿に、威圧感よりも滑稽さが漂う。
目の前の現実を拒否するかのようにつぶやく。
「明美……何を言ってるんだ……?」
女が声を上げて笑う。
「やだ……あんた、本当にわたしが明美だって思い込んじゃったんだ。あっちゃんの死体、その目で見たのに、もう忘れたの? あれからたった1週間しか経っていないのに……。やっぱり脳みそ、イカれちゃったのね。ケタミンって、すごい威力があったんだ……」
「おまえ……明美じゃないのか……? じゃあ、誰なんだ……?」
「聡美よ。明美の姉。そして、明美を死に追いやった張本人。あんたと同罪――いえ、それよりもはるかにタチが悪い極悪人だわね」
「はぁ……? じゃあ……明美は……?」
「この部屋に来た時、ちゃんと見せてあげたでしょう? トランクの中で凍りついていた死体。あれが明美。あっちゃんはね、とっくの昔に死んでるのよ」
と、林は不意に気づいたように聡美の裸体をまじまじと見つめる。その体は、自分がつけた焼印で全身をくまなく覆われている。
「俺……明美を悪魔に……捧げたはずなのに……なんでおまえ……明美の代わりをしてるんだよ……?」
「今さら? 何日も何日も、飽きもしないでずっとわたしをいたぶっていたのに。あなたと一緒にいたのは、最初からわたし。明美の姉の聡美。あなたは聡美を明美だと思い込んで、楽しそうに悪魔ごっこに浸りきっていたのよ」
「悪魔ごっこ……?」
「悪魔なんて、わたしがあなたに見せた幻影だもの」
「バカな……」
「バカはなあなた。こんなにも簡単に騙せるなんて、全然期待していなかった。何事も、恐れずに試してみるものね」
「なんでだよ……なんで騙すんだよ……」
聡美の表情が突然凍りつく。
「そんなの、決まってるじゃない。復讐……」
聡美は林にじわりと近づいた。と、急に気づいたようにしゃがみ込み、床から何かを拾い上げる。
カチカチっと、かすかな音がした。
聡美の体を切りつけさせるための大型の赤いカッターナイフだった。
林がまた少し退き、声をもらす。
「なんだよ……何する気だよ……なんだよ、復讐って……」
「あなたを殺すのよ。復讐だもの」
そして、カッターの刃先を突き出す。
林がさらに退く。と、その手に何かが当たった。
拳銃だった。
林は拳銃に目をやった。途端にその目に意思の光が蘇り、拳銃を拾い上げて立ち上がる。
だがその足元は、やはりおぼつかない。ケタミンのせいで、体が思い通りに動かせない。林は銃口を聡美に向けた。両手で握った拳銃が、その重さに耐えられないのかフラフラと揺らぐ。
にじり寄る聡美の体をまじまじと見つめてつぶやいた。
「俺を……殺すだと……? この化け物が……」
聡美は悲しげに自分の体を見下ろした。
「化け物って……わたし? ほんと、化け物よね。眉毛まで剃られちゃったし、もう人前には出られない。それにしても、すごい模様。刺青大好きなおバカなアメリカ人だって、ここまでやったら引くよね。でも、わたしをこんな姿にしたのはあなた。おもちゃみたいな魔法陣とか燭台とか集めて、悪魔の儀式だなんてね。ほんと、サイコパス……っていうより、中二病かしら」
「来るな……! 撃つぞ……」
「撃てば? 死ぬのが怖いなら、わたし、最初からこんな真似しなかったから。これでもわたし、今も身体中を焼かれた痛みに耐えているのよ。傷は全然乾いてないし、ほら、ここなんか血が垂れてきちゃってる……。殺してくれるなら、楽になれる。あなたも連続殺人犯になるから、復讐ができて嬉しいし」
「俺が……連続殺人犯……? そんなバカな……」
「そんなバカなって……あんたこそどこまでバカなの? まだ自分の立場が分かってないの? 誰だか知らないけど、実際に女の子を殺して死体を化け物みたいに焼印だらけにしてしまった。わたしもここで化け物にされた。しかもここには他に死体が2つ。そしてこの部屋は、あんたがずっと住んでいたマンション。誰だって全部あんたがやったことだと思うわよ」
「だから……それは……悪魔が……」
聡美はさらに林に近づいた。呆然と立ち尽くす林にカッターを突き出す。
林は避けるそぶりを見せたが、足元をふらつかせてまた尻餅をついた。
聡美はその足元にカッターを投げ捨てて屈むと、林の両手から銃を奪った。
林は呆然として、何も抵抗できない。
「悪魔のせいですって? 誰がそんなふざけた話、信じるの? 狂ったあんたがおもちゃを集めて悪魔ごっこにふけって、何人もの人を殺した――普通の人にはね、そういう風にしか見えないのよ」
「なんだよそれ……それが復讐なのか……? 復讐って……なんの復讐なんだよ……?」
「あんたがわたしの妹を殺したことへの復讐」
「妹って……明美か……明美を殺してなんか……いない……」
「それももう一度説明しなくちゃならないの? ケタミンで狂わすのも、面倒くさいものね。自分がやったことぐらい、覚えておきなさいよ。大事なことなんだから!」
不意に声を荒げた聡美を見上げて、林がつぶやく。
「でもなんで……あんたまで……そんな格好に……」
聡美がうなずく。
「あっちゃんに復讐されなければならないのは、わたしも同じだから。いいえ、一番罰せられなければならないのは、わたし……」
林の目には涙が滲み出している。
「なんだよ……分かんねえよ……助けてくれよ……」
聡美の言葉から怒りが湧き出す。
「助けられなければならないのは、死んでしまったあっちゃんの魂。あんたなんか、どこも傷ついてないじゃない。人を殺して、死体を汚して、ニヤニヤ楽しんでいただけ。あなたの腐りきった魂は、ずっとこんな血なまぐさい快楽を求めていたんでしょう? じゃなければ、麻薬をやっていたってあれほど残忍になれるはずがない。あんたは生まれついてのサイコキラー。そしてわたしの助けで、その正体をさらけ出しただけ。ずっと楽しんでいたんでしょう?」
「バカな……俺は……血を見るのが……嫌なんだ……」
「嘘ばっかり。あれだけ嬉しそうにしていたのに。自分の本性を認めることね。本当の自分を解放できるサイコなんて、そうそういないんだから。まさに奇跡。わたしはあんたを満足させた悪魔……いいえ、天使かもね。でも、喜びには代償がつきもの。だからあんたは、これから世間に裁かれるのよ。それが、奇跡の代償」
「なんでだよ……なんで俺が……」
林の呻きは聡美の耳には届いていなかった。
「いいじゃない、これで全部終われるんだから。ようやく妹も救われる。わたしも救われる。終わりだから、みんな教えてあげる。あっちゃんはね、わたしの全てだったの。妹であり、友達であり、子供であり、心が許せる唯一の人であり、そしてたった1人の恋人。わたしたちは何度も抱き合って絶頂を迎えた。わたしは、それだけで幸せだった。姉妹だからって、レズだからって、狂っているなんて思わなかった。今時そんなの、普通にあることだもの。世間じゃ虹色バンザイで、LGBTじゃなかったら人間じゃないってぐらいの勢いよ。Qとかなんとか、わけがわかんないものまで増えちゃってるし。差別しちゃいけませんよ、なんてデモが大っぴらにできるんだから。テレビ見てたってゲイやレズが平気で出演してバカ笑いしてる。漫画やゲームじゃ実の兄妹がセックスにふけってる。そんな時代だのも、たとえ狂っていたって誰にも迷惑はかけていなかったんだし、それでもいいと信じていた。このまま2人で年老いて、この世からひっそり消えていけばいいんだって……。あんた、いつだったか宇賀神を穴兄弟とか呼んでたわよね。下品な言葉。吐き気がする。でもわたしだってあっちゃんの体に溺れていたんだから、あんたの穴兄弟みたいなものよね。吐き気がする下品な姉だったってことよ」
「ふざけんなよ……そんなの……おまえらの勝手だろうが……。なんで俺が巻き込まれるんだよ……」
聡美がじっと林を見つめる。
「でも、あっちゃんは違った。わたしのように考えようとしても、どこかで心が受け付けなかった。体ではわたしを愛してくれたけど、自分は普通じゃないってずっと苦しんでいた。わたしを求めずにいられない自分自身に、傷つけられていた。抱き合うたびに、心に深い傷を負っていった。なのに、抱き合うことをやめられなかった。本当に心が真っ二つに引き裂かれていたのよ。そして、限界を超えてしまった……。だから、普通になりたかった……。普通に見られたかった訳じゃない。他人から認められようが気持ち悪がられようが、そんなことでわたしたちの心が変わるわけじゃないもの。ただ、本心から普通になりたかった……。あんたみたいなクズでもいいから、普通に愛し合いたかったの……。結果は、もっとひどいことになった……。そりゃあそうよね……そもそもクズが相手だったんだから。そこから逃げ出して巡り合った理想の男にまで、拒否された。すがりつくことすら許されなかった……。もう、首を吊るしかないじゃない。わたしだって、同じことよ。あの子がいない世界なんて、意味がない。意味がない世界はいらない。そんなもの、壊れてしまえばいい。でもね、あの子を追い詰めた男は許さない。一緒に壊してやる」
「許さないって……首を吊るって……自殺なんだろう……? 勝手に死んだんだろう……? なんで俺が……? 壊すって……なんだよ……」
「そう。自殺だから法律じゃ裁けない。法が罰せられないなら、わたしが罰しなくちゃ」
林はボロボロと涙を流していた。
「なんだよ……その屁理屈……俺は悪魔に従っただけなのに……」
「これだけ説明しても、まだ分からないの?」
「分かるもんか……悪魔はいたんだ……そうじゃないなら、証明してみろよ……」
「ケタミンで完全におかしくなっちゃったみたいね。こんな簡単なことが理解できないだなんて」
林は喰らいつくように聡美を見上げた。
「証明しろよ……! してみろよ……! できないんじゃないのか……⁉ 全部嘘なんじゃないのか……⁉」
聡美は、憐れむように林を見下ろす。
「まあ、悪魔にすがっていたい気持ちは分からないでもないけどね。あんたが聞いてた悪魔の命令の多くは、たぶんあんた自身の声。そんな現実を突きつけられたら、わたしなら生きていられない。でもあんたなら大丈夫よ。正真正銘の悪魔のように残虐な人間だから。わたしがほんのちょっときっかけを作っただけで、こんなに浅ましい正体を現すなんて。すごい素質があったのよ」
「黙れ……うるさい……。だから……さっさと証明しろよ……」
「仕方ないわね。付き合ってあげるわよ。どうせ、長いことじゃないんだから。あんた何日か前、悪魔から『女を連れて温泉に逃げろ』って命令されたでしょう?」
林の目の色が、抵抗から困惑に変わる。
「なぜ、俺が命令されことを知ってるんだ……? おまえにも悪魔の声が聞こえていたのか……?」
「だから、悪魔なんて最初からいないから。あれって、全部わたしが喋っていたのよ。麻薬で朦朧としているあなたに、悪魔のふりをして指図していたの。あんたが勝手に冥府の王とか女悪魔とか思い込んでただけ。なるべく口を開かないで腹話術みたいにって、苦労したけど。ケタミンの幻覚作用って、本当にびっくりしちゃうわよね」
「まさか……」
「じゃあなんで、都合よく警察の家宅捜査から逃げられたと思うの?」
「だからそれは悪魔の能力で……奴らの動きが分かったから……」
「まだアニメみたいなことを言うのね。あっちゃんそっくり。あんたこそすっかり感化されちゃってるんじゃないの? あんたってワルぶってるし、実際にワルだけど、案外中身は怖がりで世間知らずなのかもね。お化けが怖くて夜は1人でトイレに行けないお子ちゃまかしら?」
「バカにすんじゃねえよ……」
「だってあんた、根っからのバカだもの。残虐なくせに、バカ。手に負えないわよね」
「うるさい……! だから証明してみせろよ……!」
「超常現象とか悪魔とかお化けとか、あんた本気で信じちゃう方なんじゃないの? それとも、現実に耐えられなくてオカルトに救って欲しいのかな? いずれにしても、社会に適合できない半端者でしかないわよね。そんな男だから、あっちゃんは出会った途端に心を許したんだと思うわ。あの子も悪魔に救って欲しいって、ずっと願っていたようだから……」
「本当に……悪魔はいないってのかよ……? あんなに俺を操ったのに……」
「悪魔が操ったんじゃない。あんたが操られたかったの。自分の中のどす黒い欲望を吐き出したいがために、悪魔に命令されたんだって言い訳が欲しかっただけ。あんたがやったことは全部、あんたが産んで、育てて、飼ってきた心の中の悪魔がやりたかったこと。常識が怖くて、できなかったこと。あんたは、心の底では悪魔のように自由になりたかったのよ。だからわたしが、ほんのちょっと背中を押してあげた。おめでとう。ようやくあんた自身が悪魔になれたのよ」
「そんなバカな……だったら……なんでガサ入れの日時まで……分かったんだよ……⁉ おまえ……超能力でもあるのかよ……⁉」
「わたしが電話で知らせたからに決まってるじゃない。警察は、わたしがこの部屋であっちゃんの身代わりになっていることなんて知らない。だから『林を何とか外におびき出すから部屋に入って明美を探し出してください』って涙声で訴えたのよ。『1週間前に調べたのは聞いてます! でも明美は絶対にあの部屋に監禁されているんです!』ってね。別に動けないほど縛られている訳じゃないし、気を失ったふりをしたりしてスマホを使う時間を作っていたの。ケタミンを打たれてたって、身体中痛くてろくに眠れもしなかったんだから。あんただってお風呂に入ったり、買い物に外に出たりしてたじゃない。トイレも信じられないぐらい長いしね。警察に通報するチャンスなんていくらでもあったわ」
「ウソ……だろう……?」
聡美が鼻先であざ笑う。
「警察にとってはあっちゃんは、取るに足らないコソ泥でしかないし、最初から大した関心もない。そもそも、宇賀神が消えたことを嗅ぎ回られたくないから、あんたを支笏湖に行かせて心中の偽装をさせたんだから。で、警察はダイバーで捜索する必要があると思う程度には騙された。警察にだって不自然さを感じてる人は多いんでしょうけど、湖底を調べないわけにはいかない。しかも捜索に大金をつぎ込んじゃったら、今度は『騙されました』なんて簡単には認められない。わたしにもメールで連絡が来てたわ。『明美さんは私どもの宇賀神と心中したようです。姿を見せてお話を聞かせてください』だってさ。普段は携帯の電源は切ってたし、あんたはいつもケタミン漬けだったから何も気づかなかったでしょう? わたしはずっと、『妹が死んだことが認められなくて、警察から隠れながら1人で調査をしている』って見せかけていたの。警察が宇賀神が消えた事情を知りたがってたのは分かってたけど、『信用できない』ってはぐらかしていたのよ。『いったん捕まったら明美を自由に探せなくなる』ってね。つまり警察にとっては、あっちゃんはもう死人。なのに、わたしの誘いに飛びついて家宅捜索を決行した。札幌のヤクザとあなたを結びつける証拠が欲しくて仕方ないからよ。あっちゃんはとっくに死んでることにしているのに、探すのを口実にして無人の部屋を捜査したかっただけ」
「なんでわざわざ……そんな芝居を……?」
「あれ? それって、悪魔が説明したでしょう? もちろん、安心して儀式を終わらせる時間を稼ぐためよ。警察が今どんな捜査をしているか分からない。これからどう動こうとしてるかも知りようがない。儀式の最中にいきなり踏み込まれたんじゃ、興ざめだもの。いったん家捜しさせておけば、2、3日はたぶんそっとしておいてくれるでしょう? 警察が心中の偽装を本当に信じてるかどうかも、支笏湖に行けば確かめられるかもしれないしね。欲が出たのよ。ここまであなたを操れたんだから、最後までやり遂げなくちゃ……ってね。どんな儀式をさせようかなって、ワクワクしながら考えてたわけ。それに、何日も寝たままでいたぶられるのにも、飽きちゃったしね。人生最後に温泉に入っておくのも悪くないじゃない? カップ麺ばかりじゃなくて、美味しいものも食べたかったし。〝最後の晩餐〟だって言ったじゃない」
「まさか……。そんなバカな……! そんなのでたらめだ……じゃあなんであの時……温泉で……俺はサツに掴まらなかったんだよ……見張られてたはずなのに……サツだってあんなにうろついていたのに……」
聡美は、おどけたように答える。
「さあ、なんでだろう? 実はわたしにも本当のところは分かんないんだ。本当に見逃しちゃったのか、それともまだ手を出したくない都合があったんでしょうね。中途半端は嫌いだけど、わたしとしては支笏湖で捕まるなら、それならそれで良かったんだ。わざわざ運んで行ったトランクには死体が2つ、それに傷だらけ焼印だらけのわたしの体が、林大輝はサイコキラーだって証明してるんだから。そうなっていれば、あの女の子も死なずに済んだのにね。死んでまで身体中焼け焦げにされて、本当にかわいそう……。まるで昔聞いた怪談話みたい……なんて言ったっけ……そう、耳なしなんとか……あんた、ご丁寧に耳の中までブローチ押し付けて焼いていたわよね。どうでもいいところにだけ几帳面なんだから。悪魔に愛された、素敵な完璧主義者。あんな死体を見せられたら、親御さんは死にたくなるでしょうね。本当に死んじゃうかも。裁判員だって卒倒するんじゃないかしら」
「だから……あれは……悪魔に命じられて……」
「焼印なんて、1つ2つあれば充分だったのよ。死体の毛を剃っただけでも薄気味悪いんだから。なのにノリノリで、屍姦まで始めちゃうんだもの。悪魔役のわたしもびっくり。吐きそうになるのこらえるのが精一杯で、止めるなんてできなかったわ」
林は床に視線を落とし、いま聞かされた言葉を振り落とそうとするかのように首を振った。
「嘘だ……嘘だ……嘘だ……! そんなの全部嘘に決まってる……! じゃあ、なんでだよ……? なんでおまえの体は、青あざだらけになったんだよ……悪魔の他に、誰があんなことをするんだよ……」
「自分でやったに決まってるじゃない。わたしには、成し遂げなければならない計画がある。あんたに麻薬を打たれた証拠を体に残すことも計画のうちだったけど、それで気絶していたらお芝居も続けられない。だから体をベッドに打ち付けて、痛みで意識をまともに保っていたのよ。あんたの首の締め方も、だんだん激しくなっていったしね。何度もこれで死ぬんだなって諦めかけたわ」
「そんな……トランク! そうだ! だったら……サチの死体を入れたトランクは……どこから湧いて出たんだよ……⁉ あんなもの……偶然家の前に置いてあるはずがないだろうが……悪魔が手下に命じて準備させたに決まってるんだ……!」
聡美はわざとらしくうんざりしたようなため息を漏らした。
「馬鹿ね、わたしが中国人のツアコンに頼んだのよ。電話ぐらいできるって言ったでしょう? あらかじめ、必要経費はたっぷり渡していたしね。もうお金なんて持っていても仕方ないから、カフェの権利は売り払って現金に変えちゃったのよ。ほら、儀式の小道具だって、あっちゃんの小物をカフェに用意していたの。それを持って来させただけ。中身は全部通販で買ったおもちゃみたいなもの。枕にした皮表紙の本……あれって、あっちゃんの日記帳よ。中身は入れ替えて処分したけどね。最後は儀式っぽい演出ができたらあっちゃんが喜ぶかなって思ってたから、だいぶ前から準備していたの。でもね、この銃だけは本物。メイドインチャイナの密造銃だろうけど、モデルガンなんかじゃなくて、人を殺せる弾が出るわよ。まあ、たぶん、だけど」
林の視線が改めて拳銃に向かう。確かに持った感じは本物にしか思えなかった。
「堅気のあんたが……どこからそんなヤバいもの……」
「だから、ツアコンだって。中国人だよ。ツアコンなんて人を自由に動かせるし、国内の移動だって誤魔化せる。人身売買やらパスポートの偽造やら背乗りの手配やら闇口座の開設やらパクったクレジットカードやらマネロンやら……金になりそうなヤバいバイトなんて山ほどあるでしょう? 当然、手を染めてる中国人だっていっぱいいるわよ。ススキノなんてチャイニーズマフィアの縄張りだっていうし。拳銃が欲しいって言ったら、二つ返事だったわよ。向こうにもメリットがあるしね。だってわたしが密造銃で凶悪犯罪に手を染めるなら、もう共犯者だから裏切ることはできないし、いざとなったら脅迫だってできるんだから。わたしも、もう逃げられないのよね」
「まさか……全部デタラメだったのかよ……だったら……警察は俺を泳がせていたのか……?」
「倉庫から出てきた証拠を調べ終わるまでは、あなたは監視の対象であって、逮捕すべきじゃなかったんでしょうね。先走って末端の小物を捕まえたら、大元の組織を取り逃がしちゃうもの。警察の標的は、札幌のヤクザ。あんたが隠し持ってた証拠があまりに重要で量も多かったから、検証にまだ時間がかかっているだけじゃないかしら。おかげでわたしは邪魔されずにすんだから、大助かり。あんたが保身のために集めてた証拠が、あんた自身の首を締めたってことよ。皮肉よね。でもね、だからあの女の子がこの部屋に入っても警察は何もしなかった。できなかったのね。中国人に紛れて気がつかなかったのかもしれないけど、慌てて踏み込む理由はないから。ただ遊びに来て、すぐ帰っていくかもしれないし。結局、いつまでたっても女の子は出てこない。あんたに殺されちゃったんだから、これって警察の大失態よね。でも、なんだかんだ言い訳して誤魔化すんじゃない? そんな警察の隠蔽体質のおかげで、わたしの計画も見逃してもらうチャンスがあったんだから、ありがたいものよ。これこそ、ものすごい偶然よね」
林はがっくりと肩を落とした。
「みんな、なのかよ……みんな、おまえが……仕組んだのかよ……」
「でもいいじゃない。本当の悪魔になれたんだから。このことが世間に知られたら、誰もがあんたを〝悪魔〟って呼んでくれる。サイコキラーの歴史を塗り替えるスーパースターの誕生よね」
「それが……あんたの復讐……だったんだな……」
「復讐でもあり、処罰でもある。だって悪魔は、滅ぼされるのが定めでしょう?」
「悪魔ね……でも……おまえだって……悪魔なんじゃないのか……?」
「そうね。悪魔のフリはしたし、あんたをここまで追い詰められるとは思っていなかったし。怖いよね、人間って」
「そうじゃない……」
「え? 何が?」
「あんたが……一番明美を追い込んだってことだよ……明美は言ってたな……お姉ちゃんが大好き……でも怖い……怖くて怖くて死にそう……でも逃げられない……絶対逃げられない……って……。明美を壊したのは……あんただ……」
聡美は悲しそうに微笑む。
「だからそんなこと、言われなくたって全部分かってるんだって。なんであっちゃんが男どもと付き合うのを我慢していたんだと思ってるの? 日記にだって書いてあったし。だから、罰しないといけなかったの。あっちゃんを壊したあんたたち2人と、一番罪が深かったわたしを……。あっちゃんの魂を救って、わたし自身を徹底的に罰するには、あんたらの犠牲が必要だった……。巻き添えになった女の子は、本当に可哀想だったけど。でも、あんたの同類なら自業自得だったのかもね。ソープに売られて惨めな一生を送らずに済んだんだし」
そして聡美は、両手で握った銃をいきなり壁に向けて撃った。反動で腕が跳ね上がって後ずさる。発射の轟音が部屋を揺るがす。
トカレフには、旧ソ連製の正規品ですら安全装置が装備されていない。兵器としての殺傷力にのみ重きを置いて徹底的に単純化された設計なのだ。中国でライセンス生産されるものには安全装置が付けられるタイプもあるが、密造銃はその限りではない。
林が目を丸めた。
「本物……なのかよ……」
聡美も同様に驚いたようだ。
「本物だったわね……。中国人相手の口約束だから、半信半疑だったけど」
「なんで……引き金を引いただけなのに……? 初めから装填されてたのか……?」
「そうてん……? なんのこと? ま、どうでもいいけど。引き金を引くだけですぐに弾が出るようにしておいてねって頼んだのよ。だってわたし、ピストルなんて使うの初めてだし」そして聡美は、腰を抜かした林に銃口を向けた。「次はあんたを狙う。そこのカッターを取りなさい。そしてわたしを殺しなさい。殺さなければ、わたしがあんたを撃つ」
林は精一杯の素早さでカッターを取って立ち上がった。だが、相変わらず足元はおぼつかない。
「殺してやる……」
「言葉はいらない。行動しなさい。じゃないと、弾がなくなるまで撃ち込むから!」
林がカッターを振り上げる。
「人殺しの正体を現したな……おまえの人生は、これで終わりだ……!」だが、聡美の表情を見た林は突然硬直した。「おまえ……怖くないのかよ……」
聡美は穏やかに微笑んでいた。
「別に。切られる前に撃てばいいだけだし」
「そんなことをしたら……おまえも……人殺しになるんだぞ……」
聡美がうなずく。
「もともとわたしは人殺し。でも、あんたを撃ち殺しても大丈夫なの。狂気のストーカーの被害者なんだから。この銃にはあんたの指紋がべったり」
「銃を用意した中国人が証言すれば……おまえが仕組んだことだってバレるぞ!」
「意外。まだその程度の知恵は働くんだ。でも、心配ご無用。中国人が『犯罪に加担しました』なんて自白するはずがないもの。殺人に利用されたと気づいたら、さっさと姿を消して職場を変えるでしょうね。そもそも、わたしがあんたに虐待された証拠は身体中に刻まれている。1週間前に縛られた手首の傷だって、ほら、まだこんなにくっきり残っているし、犯された印は子宮の中にまで届いている。しかもあんたは、すでに3人を殺した証拠に取り囲まれて言い逃れなんてできない。1人は、全身に焼印を押された女の子。死体をあんな姿に汚すなんて、サイコ以外に考えられない。他にもトランクには死体が2つ。1人はあっちゃんを奪ってあなたのプライドを踏み潰した警官。もう1人はあっちゃん自身。あんたは、好きで好きでたまらなくて監禁までしてたあっちゃんを、なぜか殺してしまった。きっと好きすぎて、殺さずにはいられなかったんでしょうね。セックスの最中に首を絞めるようなサイコだものね。でも、あっちゃんが忘れられない。だから姉のわたしにあっちゃんと同じ格好をさせて、代わりに思う存分になぶりものにした……そんな筋書きが調書に書かれるんじゃない?」
林は目を見開いて唇を震わせる。
「な……なんだよ……その……デタラメな話……」
聡美がうなずく。
「ほんと、デタラメよね。あんたの今の姿、何……? 眉毛まで剃り落として、全身ツルツル。安っぽい悪魔のローブまで着て……自分はサイコパスです、って看板をぶら下げているようなもんじゃない。だからあんたから銃を奪って殺したとしても、完璧な正当防衛になるのよ」
「そんな……バカな……」
うろたえる林を嘲笑うように、聡美は淡々と続けた。
「バカしか語彙がないのかしら。小学生にだって笑われちゃうわよ。あっちゃんを壊してしまったわたしは、たとえ法律で罰せられなくても、一生その苦しみを背負い続けることができる。見て、この醜い体。こんな体に死ぬまで耐え続けなければならないのよ。願いが叶ったの。あんたが叶えてくれたの。それは、あっちゃんを死に追いやったわたしへの懲罰だったから。あっちゃんに罰せられるんだから、しょうがないわよね」
「おまえ……狂ってるのか……?」
聡美が皮肉っぽく笑う。
「あんたほどじゃないけどね」
「じゃあ……ここで殺してやる……」
「だから、そうしなさいって言ってるじゃない! でも、それであんたは救われるの? あんたがわたしを殺せば、現行犯で逮捕よ。だって、さっきの銃声は誰かが警察に通報してるでしょうから。あんたは完璧な狂気の殺人者。世間に晒され、裁かれ、苦しみ、死刑に怯え続ける。それとも、サイコキラーとして一生病院に閉じ込められる方がお望み? それこそわたしが望んだ、最高の処罰かもしれないわね。例え生き残るのがあんただとしても、わたしが死をもって罰せられることに変わりはない。あっちゃんを苦しめ続けてきたわたしもこうして裁きを受けて、この世から消えることができる。わたしの目的は叶えられる。そもそも、最初からあんたたちを殺すつもりなんか全然なかったのよね。あんたたち2人に思い切り恐怖を味あわせられたら、それで満足して1人で死んでいくつもりだったんだから」
「じゃあ……なんでこんなことまで……」
「偶然、っていってもいいんでしょうね。いろんなことが思った以上にうまく噛み合って、わたしをこの場所に導いてくれた。神の御技? それとも悪魔の企み? でも、その途中で、あんたたちの本性がだんだん見えてきた。そして、許せなくなってきた。宇賀神は自分のことしか考えていなくて、あっちゃんがかわいそうすぎた。だから殺したの。あんたも同じ。自分だけが可愛くて、人を傷つけても、殺しても、全然平気。それどころかどんどんエスカレートして、自分の中の悪魔をむき出しにした。それだもの、あっちゃんに代わって、処罰しなくちゃ、ね……」
「だから……お、おまえこそ……人殺しじゃないか……」
「そうよ。あっちゃんの心を殺したのも、わたし。だから、死ぬより堪え難い罰を下したの。わたしってそもそも、男に抱かれるなんて吐き気がするほど嫌。何度か試したことはあるけれど、やっぱり気持ちは変わらなかった。相手があんたならなおさら我慢できない。実際、ここでも何回も吐いちゃったしね。ずっと、気が狂いそうだった。だからこそ意味があったのよ。最も軽蔑し、最も憎むあなたに犯され、切りつけられ、焼かれ……その1つ1つが、あっちゃんがわたしに下した罰だったの。わたしはその痛みと屈辱と絶望を受け入れなければならなかった。本当に辛かった……でも、わたしは罰せられなければならなかった……罰せられたかった……。その願いは、あんたの中にいた本当の悪魔が目覚めたおかげで、こうして完璧に叶えられたわ。見て、わたしの体。全身に焼印ですって。これこそが心の底から醜いわたしに一番ふさわしい姿なのよ……」
聡美は銃を片手で握ったまま両手を広げ、全身を見せつけるためにその場でゆっくりと回った。
林は目を見開いて、おびえたように後ずさる。
「おい……何しようっていうんだ……?」
聡美は淡々と言った。
「見て欲しいだけ。あんたが精魂込めた仕事を、ね。この体……極限の醜さよね……。ありがとう……あんたが手伝ってくれなければ、わたしはわたしをここまで罰することができなかった。あんたみたいなクズでも、今まで生かしておいた甲斐があったわ」
「狂ってる……」
「そう……わたし、狂ったの。あっちゃんが死んで、狂ったのよ。だから、もう終わりにする。この世界を終わらせるのよ。わたしの望みは残らず成就した。だからこの先は、どうなっても関係ない。どうなっても構わない。わたしが生き残ろうが、あんたが生き残ろうが、もうどうでもいい。わたしたちみんなが、あっちゃんを追い詰めて狂わせた汚れた世界から解放されるのよ。この世の全ての束縛を凌駕するの。黄泉の国が本当にあるのなら、わたしはそこであっちゃん自身に裁かれる。だってもう、こんなに醜い体になったら愛してなんかもらえないもの。あっちゃんが望むなら、あっちで宇賀神さんと結ばれたっていい。もしかしたら、あっちゃんが選ぶのはあんたかもしれない。それならそれで、仕方ないわよね。全ては、あっちゃんが決めることだから。わたしたちにとっては、この世はもう終末を迎えるんだから。だからせめて、物語の結末はあんたに選ばせてあげる」
「結末っって……なんだよ……選ぶって……なんだよ……」
「わたしを殺したければ、殺せばいいってこと。でも、時間はないわよ。10分後には、わたしがあんたの心臓を撃ち抜くから。ただし、弾は1発残しておく。もしも失敗してあんたが逃げようとした時は、自分で死ねるようにね。その場合は、あんたは一生警察に追われ続ける。警官殺しの連続殺人犯として。あんたにはもう、居場所はない。逃げ道はないのよ」
林は言葉を失って呆然と聡美を見つめることしかできなかった。
と、不意に激しくドアを叩く音が聞こえた。
『警察です! ドアを開けなさい!』
聡美は声を上げて晴れ晴れと笑った。
「あら残念、もう警察の証拠調べが終わっちゃったみたい。銃声も聞かれたのかな。ちょっと早いけど、時間切れね。選んだ?」
林は恐怖に目を見開いたままだった。
「バカな……」
「そう……バカよね。本当に残念。あんた、選ぶことすらできないんだ。それじゃあ、わたしが決めなきゃね。あんたが望んだ通り、あんたの世界を壊してあげる」
恐怖が、不意に林の記憶を活性化させた。女は明美だと信じた瞬間が、鮮明に蘇る。まるで、雨雲が切れて日光が差し込むように。光の中に、魚の形のようなアザのイメージが閃く。
「そうだ……おまえ……腹に、アザがあったよな……。あれ、明美と同じアザだ……。なんで同じだ……? 姉妹だからって同じだなんて……。あ? おまえ……本当は明美なのか……? じゃあ……? は? 全部俺を嵌める芝居なのか⁉ ……だったらトランクの死体、どこの女なんだよ⁉」
林が聡美から銃を奪おうと、ふらつく手を伸ばす。
〝聡美〟はうんざりしたような表情を浮かべ、銃口を自分のこめかみに当てた。
「なんでここでバレるかな……今までの我慢が台無し……。でも、ま、もういいか。実はあの死体、姉ちゃんなの。うざくて、つい首絞めちゃった。大好きだったのに。すっごく後悔してる。後悔して、すっかり痩せちゃった。翔の本心も分かっちゃったし、あんなの、殺すしかないじゃない。2人も殺しちゃったし、責任は取らなくちゃね。でも、殺した犯人はあなた。だから、カツラまで被って姉ちゃんが生きてる芝居してたんだから。あ、日記をつけてたのって、ホントは姉ちゃんなんだ。じゃなければ、ここまで化けられなかったかもね。さてと、これで仕返しもできたし、儀式も終わったし、あとは世界を壊すだけかな――」
再び室内に銃声が轟く。
――了
そして悪魔は、最期に嗤う。 岡 辰郎 @cathands
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