作者自身もおっしゃるように、SCPや陰湿因習寒村の成分を大量に摂取できる短編連作です。私の抱いた印象は和風X-FILEでしょうか。
不可解で異常な事件が起きながらも、警察が動くほどわかりやすく直接的な被害ではない塩梅が絶妙です。
人智の及ばない超常存在に対し人間はどう向き合って生きるのか。
報告書くらいは書けそうだけどなかなか根本的な解決には至らないもどかしさ。
殊更に恐怖を煽るのではなく、静かに迫るようなおぞましさが魅力的なホラー作品です。
好きな神は……「辻褄合わせの神」ですかね。
神の二面性というか、人間次第で善神にも悪神にもなるというか……。
「ひとつずつ降りてくる神」も想像できるビジュアルがキモくていい……。
「ひと喰った神」も、不気味だけど別に困らないのでは? 本当に? という油断ならない危うさが……。
つまりぜんぶ好きです。
善とも悪ともつかず、目的も理由もない。ただ人智を超えた存在、それが「神」。
役所から派遣された片岸と宮木は、「領怪神犯」と呼ばれる怪奇現象を調査していた。
ある村では神の身体の一部が定期的に舞い降り、またある村では死者の内臓が食い荒らされる。片岸と宮木は記録はしても解決策を見出すことはできず、ただその場しのぎの対応に終始する。果たして、人の手に「領怪神犯」に抗うすべはあるのか――?
各話は「序」と「一、二、三」で構成されている。
「序」では村人の軽妙な語り口によって怪異が語られる。しかし、どこかピントのずれた説明によって、恐怖感を煽られるとともに、「神」への興味が掻き立てられることだろう。
そして、「一、二、三」では主人公である二人が登場し、調査を行う。だが、そこで恐怖は絶望と畏怖へと変わっていく。強い実感とともに、神々は人の手には負えないという事実を突き付けられるからだ。
作者の変幻自在な語り口の妙、奇異なる行動をする得体の知れない神々、それに対する主人公たちの焦燥。そのどれもが読者を絶望の淵へと誘導していく。
人智を超えた存在をまざまざと描き、理解できないままに圧倒的な余韻を残す伝奇ホラーの快作。