媚びない姿勢が好印象

 今回の赤いきつねと緑のたぬきの幸せ染みるショートストーリーコンテストであるが、当然作中にカップ麺としての赤いきつねと緑のたぬきを登場させている作品が殆どである。作中の登場人物がひと時の団らんをそれらのカップ麺と過ごすような展開が殆どだ。
 しかし本作は違う。カップ麺のカの字も無い。作中で登場する赤いきつねはカップ麺ではなく、キャラクターとしての赤いきつねだ。作中で生き生きと動き、相方のたぬきと森の住人の悩みに応えてゆく。
 読了した後にまず行ったのは応募規約の再確認だ。そして私は「この作者様はやるな。流石だ」と息づいた。規約には以下のように書いてある。

「作中に「赤いきつね」もしくは「緑のたぬき」という文字を、1回以上使用していること。漢字以外のひらがな、カタカナでの使用も可とします。」

 何もこれらの名前の「カップ麺」を作中に登場させよなどという条件は書かれていない。にも関わらず私を含めた大多数の投稿者はあたかもこれらの名を冠したカップ麺が幸せの礎になるとでも言うかの様に作中にカップ麺を登場させていた。幸せ染みる物語にするというもう一つの要件もしっかりと満たしている点も好印象だ。

 言葉の意味を正確に読み、捉えて、スポンサーに媚びない自らの物語を綴った作者様に敬意を表します。