木の恩恵

「〜つまりこの村は、木の恩恵を受けつつ、皆んながそれに感謝しながら生活してるってわけよ、、、って聞いてたか?」


「・・・すいません。昔のことを思い出してしまって。」


旅人は、眉間に皺を寄せて腕を組んでいる男に詫びた。


「おいおい、人が話してる時に違うことに集中できるって、どれだけ器用なんだよ!、、、っがははははは!」


そういって、しかめ面を崩して男は豪快に笑う。

木の恩恵を受けている村の人々は、裏表がなく、感情に素直な性格な人が多いようだ。


「おい!また別のこと考えたんじゃないか?」


「いえ、先ほどおっしゃっていた木の恩恵について、その恩恵を受けている村の方々は、とても清々しい性格の方が多いのかなと思いまして。」


そう言った旅人をしばらく怪訝な表情で眺めた男は、何かを思いついたような顔をして、勢いよく立ち上がる。

そして、旅人の後ろへ周り、腰を持ち上げて立ち上がらせると


「そんじゃあ、いくぞ!」


と言って、旅人を無理やり外へと連れ出す。


そうして、この村の入り口から男の家へ向かう時に見た、踊りを踊る村人たちの元へ連れて行かれた。


「木の恩恵には、主に、安心、信頼、そして調和がある。つまりここでやることは一つしかねえ。」


「なんでしょう?」


端正な顔立ちを端正なまま訪ねる旅人に、男は、


「歌って踊るんだよ!」


と言って、旅人の背中を勢いよく叩く。


〜その日旅人は、木の恩恵とその感謝に包まれた空間と対話しながら、村人との歌と踊りに浸っていた〜

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森を渡るもの 独り踊り @HitoriOdori

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