第5話 聖域
*
ダリウスとアニスターシアが街道を走ること数分、視界に人影のようなものが見えてきた。
そしてその奥には魔物と思わしき黒い大きな影。
しきりに目の前にあるナニカに攻撃を仕掛けているらしいがうまくいっていないらしい。
振りかざした手が見えない障壁のようなものに弾かれているのが見えた。
「これは、、、、。」
人影まであと数メートルのところまできたダリウスは目の前の光景に言葉を失った。
先ほどから魔物が攻撃を仕掛けていたナニカ、は聖女メリダによって張られた障壁魔法、【聖域】であった。
これは高位の聖職者のみが使えるという最上級の防壁魔法だ。
つまりはこの魔法を使わざるを得ない状況まで追いつめられている、という事だろう。
その理由は彼女の後ろにあった。
彼女の後ろで倒れているのは襲われた商人らしき男性と小間使いのような少女に御者らしき老人。
そして一体何があったのか、鎧を大破させ血の気を失った顔で横たわっている分隊長。
この惨状を目にして一般兵の自分と聖女見習いのアニスターシアになにができるというのだろう。
「ダリウス、アニスターシア!早く私の後ろへ!」
突っ立っていたらダリウスたちの到着に気が付いた聖女メリダに恫喝された。
その声に我に返ったダリウスはアニスターシアの手を引き言われた通りに聖女メリダの後ろに入る。
「メリダ様、いったいこれはどういう、、、、?」
「どうもこうもありません。この魔物は悪意を持った誰かによって呼び出されています。それもかなりの高レベル。相手の力量を見誤った結果がそこに寝ているダンです。」
やはりいくら聖女メリダとは言え最上級の防御魔法を使うのはそうとう堪えるらしい。
心なしか分隊長の扱いが雑だ。
しかし分隊長ですら敵わない相手に対していったい何ができるというのだろうか?
「アニスターシア、あなたに言いたいことは山ほどありますがまずはこの状況をどうにかしなければなっりませせん。私が聖魔法の祈りを捧げている間この【聖域】を維持していなさい。」
それはそれはとーっても怖い視線でアニスターシアを射抜く。
だが射抜かれた当の本人はどこ吹く風。
周囲の木々を眺めたり腕を振り下ろす魔物を見つめたりとまるでピクニックに来た子供だ。
「アニスターシア!聞いているのですか⁉【聖域】を維持しなさい。」
「嫌。」
死神になりたい聖女様 銀髪ウルフ @loupdargent
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