ちょ、待てよ。
ム月 北斗
取り調べにて。
オレは今、警察に取り調べを受けている。
なぜかって?オレは仲間と手を組んで『強盗』をしたからだ。
だが仲間を売るわけにはいかない、悪党にだってそれなりのプライドっつうモンがある。
オレの口、割れるものなら割ってみるんだな!おまわりさんよぉ!
「さて・・・かれこれ君の取り調べを始めて3時間経ったね。」
・・・・・
「そろそろ腹が減っただろう?メシでも食うか?」
・・・・・
「こういうのは刑事ドラマだけなんだぜ。田中君、悪いんだけど1万円渡すから―――」
(ふん、なんだ『カツ丼』とでもいうのか?ドラマかよ。)
「近所のスーパーで『赤いきつね』と『緑のたぬき』買ってきて、セールのチラシ貰ったから。君の分も買っていいよ。」
そこ『カツ丼』じゃねーのかよ!
「はい、刑事!いってきます!!」
「あぁ、おつり忘れないでねー。いやー、アイツ。この間おつり持って来なくてさ。」
おつりって・・・いくら渡したんだよ。
「ん?5千円。」
何買わせたんだよ。
「コーヒー。コンビニで買ってね、おつりを募金箱に入れちゃったんだって(笑。」
あんた、それ・・・『ネコババ』じゃね?
「違うよー、アイツは優しいだけさ。その前も3千円渡してコンビニで栄養ドリンク買ってきてもらったら、それも募金箱に入れちゃったらしいんだ。」
ネコババだよ、それ!!
「アイツ・・・他人のこと思いやれる、良いやつなんだよ。」
なんで疑わねえんだよ!清々しくバカなのかよ、アンタ!ピュアかッ!
「お待たせしましたー!」
「おかえりー、お湯沸かしてくるね。」
呑気か、お前ら!
「おまたせー、お湯入れてきたよ。赤いのと緑の、どっちがいい?」
じゃ、じゃあ『赤いきつね』。
「・・・そっかぁ。」
なんでションボリすんだよ!赤いのが食べたいのかよ!
「油揚げ・・・食べたかったなぁ・・・。」
分かったよ!じゃあ『緑のたぬき』でいいよ!
「え、そうかい?じゃあ緑をどうぞ♪」
手のひら返したみてえに機嫌いいな、腹立つわー。
「すいませーん、刑事。ボクもここで食べていいですか?」
「おや、田中君。一課で食べられなかったのかい?」
「それが・・・みんなして豚骨ラーメン食べてて、匂いが・・・。」
どんな部署だよ!豚骨ラーメン臭ぇ部署ってなんだよ!?
「んー、なら向こうにもある取調室も匂うんだろうなー。いいよ、ここでお食べ。」
優しいか!?なんで取調室で野郎3人で仲良く麵
3分後・・・
「3分経ったね。緑のたぬき食べな。」
じゃあ、いただきます。
(ジーーーッ・・・)
・・・んだよ。
「ん?あぁ、うどんは5分だからね。先に食べていいよ。」
・・・食い辛いんだよ!見られてると!
「麺伸びちゃうよ?お食べ。」
余計食い辛いわ!? 見んなよ!!
「ごめんごめん。じゃあ背中向けてるね。」
(こいつマジで背中向けやがった・・・オレ一応、取り調べ受けてる容疑者だよな?攻撃されるとか考えねーのかな。)
「あー!うどん、まだかなー!!あと、2分かーーー!!!」
食い辛ぇ!!この上なく食い辛ぇ!!?
「まだ食べてないの?伸びるよ?」
胸に手ぇ当てて考えろよ!
「んー?・・・あ、田中君、おつりは?」
今それじゃねえだろ!
「すみませーん刑事、おつりは募金箱に入れちゃいました。」
「そっかぁ、優しいなぁお前は。」
ぜってェ嘘だろ!カップ麺3つで1万円でおつりどんだけ来ると思ってんだよ!入れねえだろ募金箱に普通!?てか、さっきから取調室なんか匂うな!?
「すいません、たぶんボクの『カレーうどん』ですね。」
負けてねえよ!豚骨ラーメンとどっこいだよ!!
「匂うだって?君は田中君がおつりをネコババしてるとでも言うのかい?!」
さっきから言ってんだよ!何なら19行目辺りで言ってるわ!!
「すみません刑事・・・ボク、『ネコババ』やりました・・・。」
「田中君・・・。」
「どうしてもお金が必要で・・・。」
「何に使ったんだい?」
「・・・ゲームのガチャです。」
クズだなァお前!オレが言うのもなんだけどさ!!
「話の続きは取調室・・・ここは使ってるから豚骨臭い一課の取調室でしてもらうからね。」
「・・・はい。」
ヤな取り調べ!・・・てか、え?オレの取り調べは?
「田中君の後に続きをするよ。じゃあ、行ってくるからね。」
いや、あの・・・
ちょ、ちょ待てよ!オレも!オレもやった!!強盗した!しました!!仲間もいます!
オレの取り調べをしろオオオォォォーッ!!?
ちょ、待てよ。 ム月 北斗 @mutsuki_hokuto
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