シレア国長編三作目。
いつものことだが、シレア(とテハイザ)は自然が美しい。
清々しい緑に満ちたシレア、爽やかな海風の吹くテハイザが目の前に展開される。
今回のテーマは『力』の偏りだろうか。
集権と分散。権力を中央に集めるか、敢えて分けるか。
権力が一カ所に集中することで起こる弊害があるために、意図してそれを分離する。
秤の分銅をどこに置くかという問題である。
だが、時として力を合わせることも必要だ。それを教えるのは盟友テハイザ国王。
——力というものは下手に集まると厄介だが、逆に一処に集めなければならない時もある。
彼らがどのように謎を解き、どうやって問題を解決していくか、その目で確かめて欲しい。
シレアシリーズ長編三作目の本作。
今回は、冒頭から何やら陰謀の気配がむんむんしております。
さらに、想定外の現象が起こり、いつも凛としている主人公二人も体調不良、さらに隣国にも影響が出ていて、ハラハラどきどきの連続です。
そして、なんだか怪しい新キャラの登場に、この女は味方なのか敵なのか、と疑い続けながら読んでいったのですが……。
が。
いや、まじか。
……という、シレア再入国組も、そうでない読者も驚く事実が待っているのですが、そちらは最後の楽しみとしまして。
丁寧で華やかな描写と上品なキャラクターが魅力の作品。
世界観に深く浸り方、おすすめです。
若き王子と王女の共同統治により治めれている国、シレア。
そんなシレアで唯一時間を告げる時計台に異変が起きた。それと時を同じくして、隣国でも何やら異変が。
自らの国の、さらには隣国でも起こっている異変に、若き二人の統治者が挑む。そんな本作の大きな見所は、繊細で美しい情景描写。
この物語はフィクションであり、当然登場する国も風景も建物も、全て架空のもの。ですが細かく書かれた美しい表現が読む人の想像力を刺激し、頭の中に壮大な世界を作り上げます。
そしてもうひとつの見所が、魅力溢れるキャラクター。自分の知る限り、カクヨムにある数多くの作品の中でも、トップクラスに熱狂的なファンが多いのです。
上にも書いた若き王子と王女の兄妹が、それぞれ統治者として、そして一人の人間としてとっても魅力的。国のため、民のために何をすればいいかを常に考え、何かあった時には自ら積極的に動き、事態の推移を確認し、解決への道を模索する。
本来人の上に立つ者が前に出て頑張るってシチュエーション、みんな好きじゃないですか?
頑張りすぎると、周りの人にとってはある種の苦労も出てくるかもしれません。本作の場合、とある従者がそれでなかなかの苦労人となるのですが、その苦労が、この従者に兄妹にも負けないくらいの大きな人気を与えてくれるのです。
これだけ素敵なキャラ達ですが、それぞれが絡むとその魅力も倍増。物語の目的となる事件解決そのものも気になりますが、それはそれとして、キャラ同士の掛け合いを、いつまでもいつまでも見ていたくなります。
作者様の大人気ファンタジー小説、シレア国と言う異世界の王国を舞台としたシリーズ最新作。
異世界ファンタジーと言っても、天性ものやスキルを活用するゲームっぽい世界ではありません。
作り込まれた独自の世界観が売りの、ハイファンタジー小説です。
最近の流行りから、こういったハイファンタジー作品は数を減らしてきていますけど、好きな人は多いはず。そんな人にこそ読んでもらいたいお話なのです。
キャラ人気がとにかく高く、物腰柔らかで、それでいて威厳を兼ね備えた殿下。その妹でとっても行動力のある王女。もしかしたら主よりも人気があるのではと思う、殿下に遣える従者。
この魅力的なキャラクター達の掛け合いは、読んでいてほのぼのキュンキュンさせられました。
謎めいたストーリーも魅力的。
平和なシレア国を揺るがすかもしれない大きな異変が起きるのですが、殿下や王女達は、それにどう立ち向かうのか。
動き、描写が丁寧に書かれていて、だんだんと事態が深刻になってくる緊迫感が、読み手にも伝わってきました。
キャラクターにほっこり、ストーリーにハラハラできる、上質の異世界ファンタジーを、お楽しみください。
このシレアシリーズ(に限った話じゃないけど)の何が良いって、もちろん行ったことなんてないはずなのに(何せ異世界であるからして)、容易にその風景を思い浮かべることが出来ちゃうような風景描写の素晴らしさですとか、しっかり作り込まれた世界観ですとか、それとあと!
あと!
キャラクターですとか!!!
キャラクターですとか!!!(大事なことなので二回書きました)
いや、私ね、正直なところシリアスな作品って書くのも苦手なんですけど、読むのも苦手なんですよ。理由は一つ、頭が馬鹿だからです。あんまり固いお話ですと、もう全くついていけなくなっちゃうんですよ。
ですけれども、このお話はライトなシリアスと言いますかね(あくまでも宇部基準です)、読めちゃうんですよ。
違いますよ、馬鹿でもわかるとかそういうことじゃなくて。そこまでガチガチに固くないんですよ。描写はきれいだし、ハラハラドキドキの展開もあるし、ちょっとふふって笑ってしまうところもあって、そんで何よりキャラが良い!(言い回しは違えど三回目)
何?
この兄妹マジで何?!
いや兄妹だけじゃないぞ、おい、従者までどうなってんだおい!
責任者出て来――、あっ、違います、殿下ではなくてですね。あなたが出て来ると王女様と従者がついて来ちゃうから。
ごくりと固唾を飲んで見守るべきシーンのはずなのに、兄と妹がキャッキャし出したり(宇部にそう見えているだけです)、従者とキャッキャし出したり(宇部にそう見えているだけです)してもう、ニヤニヤが止まらないんですよ。おかしいな、いま私はシリアスなファンタジー小説を読んでいるはずなんだが!?
ただですね、コメント欄を見る限りですよ、どうにもこれ私だけじゃないんじゃないかな、って疑惑がね?いま私の中で持ち上がってて。
あれ、もしかして、このキャラ達に殺られた(ハートを射抜かれた的な意味で)人、結構いるんじゃない?って。
書き手としてはですよ、描写とか、ストーリーとかを褒められるのはもちろん嬉しいんですけど、キャラを好きになってもらえるのって、めちゃくちゃ嬉しいんですよ。書き手としては、なんて書きましたけど、私だったらめちゃくちゃ嬉しいやつなんですよ。
なので、もし「我、このキャラを推したり!」なんて思った方はですね、もうほんと遠慮なくコメントでその熱い思いをぶつけていただけたらな、ってね。作者でもないのに思うわけです。いやマジで仲間を増やしたいんですよ。
異世界転生とか、チートでハーレムで色んな種族の美少女から次々と求婚されるとか、実はなんかすごい力があるんだけどなんやかんやでパーティーを追放されたりとか、そんでその後ザマァな展開になるとか、そういう話ではないんですけど、そればかりが異世界ファンタジーじゃないんです!
上記の異世界ファンタジーにちょっと飽きてきたな、って方!
ここにね、それに該当しない素敵なファンタジーがあります!