心をこめて、美味しい料理を作る。それを口にする幸せが人の心を動かす。
- ★★★ Excellent!!!
心をこめて、美味しい料理を作る。それを口にする幸せが人の心を動かす。とてもシンプルだけれど、慌ただしい日々の中で忘れがちなことではないかと、この物語を読み終えて改めて考えさせられました。
主人公の穂花は、モラハラ夫に「お前の料理はまずい」と貶され続け、自分の料理の味はまずいのだと思い込まされます。そんな彼女の料理を心からおいしいと食べてくれる親友・優奈やMINATOの姿に、穂花は心を救われていきます。穂花の心を込めて作る料理は、MINATOにとって一つ一つが幸せな味そのものだったに違いなく、穂花もまた、料理を喜んでもらえることは自分自身を受け止めてもらえることと同じだったのではないかと想像します。
簡単で手軽に食べられるものが本当に多くなった現代の食卓。カット済の材料を炒めて添付のソースを絡めれば出来上がるもの、レンチンでお店レベルの美味しさが味わえる調理済の食品たち。こういう生活の中で、「自分だけの自慢の味は?」と聞かれたら、ちゃんと答えられるのか。すぐには浮かんでこない自分に、すっと青ざめます。
大切な人のために丁寧に下ごしらえをし、ひとつひとつ味をつけ、美味しく仕上げる。そういう相手への思いのこもった仕事こそが、愛情や幸せを作っていくのだと、大切なことを気づかせてもらった気がします。
本当に人を愛することを知り始めた人気アイドルと、彼との出会いで深い心の傷が癒えていく主人公。二人の心のやりとりは、とても暖かく、細やかな優しさに満ちています。ほっと安らぐ幸せがいっぱいの、素敵な物語。おすすめです。