「大晦日に縁を結ぶ」

作者 夷也荊

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★★★ Excellent!!!

時代の変化に流されず伝統を維持し続けた一家が、時代の趨勢の波に巻き込まれる。そこに、新たな発見を見出し、そこから調和と未来への前進へのプロローグが始まる。
地方独自の風習や独自の固執が、とてもリアルで変化に対する緊張感がビンビン伝わりました。
肉厚な力強い文章を読ませていただきありがとうございます。

★★★ Excellent!!!

昔ながらの伝統や文化、習慣。様々な物事が目まぐるしく移り変わる中でも、決して変わることのない幸せがある。——そんな、忘れがちだけれど大切なことに気付かせてくれる作品です。

主人公の曾祖父母の時代、祖父母の時代、父母の時代、そして自分自身。時代が移りが変わり、古くから引き継いできた文化も少しずつ形を変え、便利になっていく。それと同時に失われていくものがある。この世を去る人がいて、自分の心身にも山や谷があり……あらゆることが、立ち止まることなく変化していく。
そんな激しい時間の流れの中でも、決して変わることのないもの。それは、「美味しいものをみんなで囲むこと」の温もりと喜び。
昔ながらの風習にこだわる厳しい祖母が、年越しに「緑のたぬき」を食べる家族に釣られてその美味しさを認めざるを得ないワンシーンは、とても印象的でした。

例え苦しい時間が訪れても、心の支えになるものの存在を思い描けることは、幸せだ。そんなことを改めてしみじみと思わせてくれる、深い温もりに満ちた短編です。