その自転車は捨てられたの?
一色 サラ
放置さらた自転車
登坂ナギナは、朝の10時半過ぎにマンションのエントランスと出た。歩いて10分の所にあるレストラン『Error』で、ホールスタッフとして週5日で働いていた。お店は11時に開くが、今日は開店の準備の仕事をする日ではなかったで、遅めの出勤だ。
多くのマンションんが立ち並んでいて、閑散とした場所だ。車もほとんど通らない。1つのマンションを横切ろうとしたら、そこに、植木の間に見知らぬ自転車が放置されていた。
こんなところに自転車を捨てる人はどんな人だろう。少し歩くスピードを落として自転車の近くに行った。後部の部分には鍵がかかっている。捨てたのに、鍵をかけるなら、撤去に困りそうだ。とりあえず、ナズナは、気になったが遅刻するわけにもいかなので、お店に向かった。
あの自転車はあそこで寂しく何日も過ごすのだろうか。
「おはよう」
先輩の松永佳代が、店の外を掃除していた。
「おはようございます」
「何ムスッとした顔してんの?」
笑顔の松永さんがナギナの目に映る。
「いえ、別に」
そう言って、裏口の方へとある行く。
制服に着替えていると、掃除を終えた松永が更衣室に入ってきた。
「で、何があったの?」
「そんなに、気になります?」
「まあ、なんとなく」
「ああ、放置された自転車が植木の間にあって、なんかムカついてしまったんですよね。」
「それだけ?登坂と何か関係あるの?」
「ないですけど、何となく。 」
「なにそれ。だったら気にしなくていいんじゃない。」
「そうですけど、何かムカつていしまって」
「でも、自転車の処分の仕方ってわかんないよね」
「まあ、そうですけど。」
ナギナは松永の話を受け流されて、怒っていた気持ちが薄れてしまった。
コンコン。ドアがノックされた。
ホールに着くと、店長の笠木康太がいつもの不気味な笑顔を浮かべていた。
「なんかあったの?」
「登坂が、放置された自転車が気になったみたいで」
ナギナより先に松永が言った。
「ええ、そうなんだ。」
店長もあまり興味はなかったみたいで、少しテンションは下がったみたいに声のトーンが下がった。
「きっと捨てれたんですよ」
ナギナは言った。
「意外にそうじゃなかったりしてな」
店長がナギナの考えを否定して来た。
「『意外と』ってなんですか?」
「さあね。人の行動は意外と予想できないから」
店長はそう言って、調理場へと消えて行った。
「もうすぐお店開くし、考えても仕方ないし、気にせず、働きましょう。」
松永に言われて、ナギナも仕事モードになるしかなった。
お昼過ぎで、少し込み合った店内も、だんだんとお客さんがまばらになってきた。
「登坂さん」
男性従業員の高山に声をかけられた。
「なんか、さあ。さっき、お客さんの話が聞こえてきたんだけどさあ、」
「高山」
調理場の方から店長の声が聞こえてきた。「はーい」と言いながら高山が、右目を閉じてウィンクをして、調理場に戻っていった。高山は調理場で料理人として働いている。どこか陽気で、誰にでも当たり障りのない態度をとってくる。少しお腹が出ていて、ぽっちゃりしてるが、意外とモテるらしい。
高山が何を話したかったのか気になってしまう。
「また、眉間に皺が寄ってるよ。」
松永がナズナの顔を凝視する。
「松永さん。」なぜが、松永の顔を見たら、ほっとした。
「どうした?」
「高山さんが何か言いかけて、調理場に戻って言ってしまって…」
松永は驚きもせず、何かしているようなだった。
「ああ、あれね。お客さんが放置自転車を話していたみたいよ。でも登坂の言っていた放置自転車と同じものかは分からないど」
「放置自転車…」
「そうだ、酔った人がマンションの植木の間に自転車を停めて、家に帰ってしまったらしいのよ。」
「なんですか、それ!?」
「その放置した人の奥さんが、たまたま、自転車を見かけて、旦那さんに連絡したら、酔ってて覚えてないって連絡がきたらしいのよ」
「それって、どこまで本当なんですかね?」
「さあね。登坂が言っていた放置自転車だったら、いいのにね。」
まあ同じ自転車ならいいけど、ただナズナは引っかかった。
「何で、高山さんが放置自転車のこと知っているんですか?」
「まあ、店長が言いふらしてんじゃない。」
ナズナは呆れてしまった。そのあと、仕事が思っても高山さんと話すことはなく、ナズナは家に帰ることになった。
仕事の帰りに植木の近くを通ると、もうすでに自転車は撤去されていた。
マンションの近くで話す声が聞こえてきた。
「酔って、自転車を植木の所に置いていくってどういう神経してるんでしょうね」
「まあ、取りに来た奥さんも、申し訳なさそうだったわね」
年配の女性同士の会話だった。
店長の言う通り、意外だった。人が予想外なことをするものだ。
その自転車は捨てられたの? 一色 サラ @Saku89make
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