紅茶
王生らてぃ
本文
「は~おいし。やっぱリリちゃんの入れる紅茶が一番だわ」
「うふふ、そう?」
「なんかこう、クセになる味っていうのかなぁ。すっきりしてるんだけど、なんか後味がこう……違うんだよね。飲んだ後、身体がぽかぽかしてくるし……それになんだか、甘い香りなんだけど、味わいは苦味もあってきりりとしていて……」
「も~、なにそれ」
「もう喫茶店とかの紅茶じゃ満足できないよ」
「うれしい。ありがとう」
「ね、どこの葉っぱ、使ってるの?」
「ないしょ」
「え~。いっつもないしょだけどさ、教えてよ」
「どうして?」
「リリちゃんがいないときも、自分で淹れてみたいの。こんなおいしい紅茶」
「……え? 何言ってるの? 愛子ちゃんの飲む紅茶はずっとわたしが淹れてあげるから、わたしが淹れてない紅茶は飲んじゃだめだよ」
「でも、自分でインスタントの紅茶作っても、なんだかおいしくなくて……」
「インスタント?」
「え? うん」
「インスタントの紅茶、飲んでるの?」
「うん、ひとりでいるときは……」
「だめ! だめ! だめ! だめだよ、そんなの!」
「え、ええ? なんで?」
「インスタントって、保存料とか、着色料とか、カロリーとか……すっごく、身体に悪いんだから! そんなの飲んじゃったら、愛子ちゃんの身体がぼろぼろになっちゃう……! 愛子ちゃんが病気になっちゃったりしたら、わ、わたし……!」
「びょっ、病気って大袈裟だなあ。そんなこと……」
「絶対だめだからね、約束だよ」
「え?」
「これから愛子ちゃんはわたしの淹れた紅茶だけ飲んで、わたしの作ったお菓子だけ食べて過ごせばいいの、わかった? わかった? ねえ?」
「わ、わかったよ……わかったから……」
「ほんと? 約束? 誓ってくれる?」
「う、うん」
「よかったぁ。じゃあ、おかわり淹れてあげるね」
「うん、ありがと……」
○
おかしい。
おかしい。
おかしい。
おかしい。
おかしい。
「ふぅーっ、ふぅーっ、ふぅーっ……」
頭痛と吐き気が止まらない。頭がガンガンしてその度に目の前が軋むように赤くなる。とても気分が悪い、どうして? 風邪? インフルエンザ? どれも違う。熱は出てないし、咳も鼻水もない。ただ頭が痛くて気分が悪い。それに異常に喉が渇く。水をいくら飲んでも足りない。
どうして?
どうして?
どうして?
どうして?
どうして?
頭痛を我慢してネットで原因を調べてみた。
ストレス? 違う。
猫背? 違う。
気圧の変化? 違う。
生理? 違う。
「あ…………、」
『普段から紅茶やコーヒーをよく飲む人は、知らないうちにカフェイン中毒になっているかもしれません。』
「ただいまぁ~。ごめんね遅くなっちゃって」
「リリ!」
「わっ、どうしたの愛子ちゃん……」
「こ、紅茶……紅茶淹れて、紅茶飲みたい、早く、早く早く早く!」
「はいはい、わかりましたよ」
「早く……リリの紅茶がないと……わたし……!」
「はいはい、すぐ淹れてあげるからね~」
「は~おいし。よかったぁ、さっきまで気分が悪かったのが嘘みたい。リリの紅茶、まるで魔法のお薬だね」
「ふふ。そうかな」
紅茶 王生らてぃ @lathi_ikurumi
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