闇の世界で触れる恐怖。そして、それだけでは終わらない物語。

人を喰らう化け物に襲われ、命を落としてしまったひかり。
次に気がついた時彼女がいたのは、現世ともあの世とも違う、闇の世界と呼ばれる場所。そこでひかりは、自分の命を奪った化け物、翔琉と出会います。
しかもこの世界にいるのは、人に似ているけれど人ではない、者達。ひかりは、彼らと共に生活することを余儀なくされます。

殺されたばかりか、自らを殺した者を含めた異形の存在達と共に暮らすことになる。それは、どれほどの恐怖と絶望に包まれることになるでしょう。そんな風に思っていました。

しかし、ただ怖いだけで終わらないのがこのお話の大きな見所。
確かに本作では、恐ろしいと思われる存在が多数出てきて、どんな目にあうかという不安に幾度となくかられます。
ですがそんな者達も、決して怖いだけではありません。彼らがなぜそうなったのか。心に何を抱えているのか。一つ一つ知る度に、切なさが、そして愛しさが重なっていきます。

人は、未知なもの、理解できないものを恐れます。けれどだからこそ、恐ろしいと思っていた何かも少しずつ知って理解していけば、最初は全く気づかなかった暖かな一面に触れることだってある。
本作を読んで、怖さの裏に隠れた愛しさに気づいてほしいです。

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