青い空に輝くもの

「ちょっと……待って……息切れが……ゲホッ」


 日が真上から照りつける中、僕はいつもの犬と走り回っている。まぁ、僕がおもちゃを持っているから追いかけられているのだが。

 前傾姿勢になって肩で息をする僕に、犬は容赦なく飛び掛ってきた。勢いそのままに僕らは倒れ込む。芝生の上で大の字になって空を眺める。すると犬が僕を覗き込んできて、顔を舐め始めた。


「くすぐったいってば」


 勿論そんな人間の言葉は通じず、僕はされるがまま。

 向こうから飼い主が謝りながら走ってくる。いいんですよ〜なんて言って飄々と立ち上がる。今日はここまでだよ。言ってみても伝わったのだろうか。

 ミネラルウォーターを買ってベンチに座り込む。たまにはこうして走らないといけないからな。毎日走っている気がするが、この際それは気にしないでおく。

 長く息を吐いて、白くなって消えていく呼気を眺める。すると足の上に、黒猫と野良猫が乗ってきた。こいつらも、気付けば親友らしい。面白いやつらだ。

 足元に咲いている白い花に、少しだけ残ってしまったミネラルウォーターをかけてみる。お前も頑張れよ。なんて言いながら。

 黒と白の背中を撫でながら、ぼうっと空を見上げる。

 

そこには見えないけれど、きっと月が、星が、命が、輝いているのだろう。


 そう思えた僕は、どうしようもなく幸せだ。

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青く澄渡る空に、灯が燈る。 鈴響聖夜 @seiya-writer

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