Letzter Patient 僕
「あはっ、間違ってたら、ごめんね?目黒君はずっと、僕のこと、見てたよね?」
学校からの帰り道。
手塚君はニコニコと笑ってそう言った。
知ってたのっ!
あまりに直球過ぎて、僕は何も言えなかったのだけど。
「僕、見張られてるのかなって思って、ちょっと怖かったんだ」
「あ、ごめん・・・」
「あ、今は怖くないよ?あはっ、気にしないで」
気付けば、僕たちが歩いているのは、通学路から外れた道。
「手塚君、どこ行くの?」
「あはっ、秘密の場所」
どんどんと進むと。
突然、綺麗なお花畑が現れた。
「あはっ。ね?綺麗でしょ?」
「うん・・・・」
そう言えば、手塚君、言ってたな。
『すごく綺麗な花が咲いている場所があるのを見つけた』って。
「僕ね、ずっと目黒君とお話してみたいって、思ってたんだ。そのうちお話できるかなって思ってたんだけど・・・・もう、時間が無くて。だから今日、思い切って誘ってみた」
「えっ?」
「僕、また転校することになっちゃったんだ・・・・あはっ、残念だけど」
手塚君はニコニコ笑いながら綺麗なお花畑を眺めていたけど。
なんだがとても寂しそうだった。
「僕のお父さん、仕事であちこち行かなくちゃいけないから、仕方ないんだけどね。僕、これでもう転校、5回目なの。せっかくみんなと仲良くなれたと思ったのに」
僕は、手塚君がいつもニコニコして、誰とでもすぐ仲良くなれる理由が分かった気がした。
手塚君は、そうしないと、やっていけなかったんだ、きっと。
「まぁ、もう慣れたけどね、あはっ」
「手塚君はすごいな、あはっ」
「なにが?」
「僕なんか人見知りだから、なかなか友達ができないけど、手塚君はいつもニコニコしていて、すぐに誰とでも仲良くなれるから」
「あはっ、ありがとう、目黒君。でも、君だってすごいよ」
「え?」
「だって、僕のことそんなによく分かってくれるなんて、僕、嬉しいな、あはっ!」
「・・・・そんな事言われると照れるじゃないか、あはっ!」
手塚君の転校は寂しかったけど。
僕は、嬉しかった。
僕も『あはの呪い』にかかることができて。
きっと、手塚君の『あはの呪い』は、幸せの呪いだ。
誰もがみんな、笑顔になれる。
「手塚君、引っ越し先の住所教えてね。絶対手紙書くから、あはっ!」
「うん、もちろん!僕も手紙書くよ、あはっ!」
手塚君。
幸せの『あはの呪い』をありがとう。
転校先のみんなにも、かけてあげてね。
【終】
あはの呪い 平 遊 @taira_yuu
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