Patient №6~ 全員(僕以外)

「おはよう、あはっ」

「ねぇ、昨日のテレビ見た?あはっ、面白かったね!」

「あは、そうだね!」


手塚君が転校してきてからまだ半年くらいだけど。

『あはの呪い』は、あっという間に広まってしまったようだ。

今、この呪いに掛かっていないのは、この学校ではきっと僕だけだろうと思う。


「あはっ、おはよう、みんな!早く席に着いて!」


清野先生も、もう何の違和感を覚える事もなく、ごく普通に『あは』を連呼している。


「出席をとります、あは。相沢君、秋野くん・・・・」




「やべ、俺宿題やってくんの忘れちゃった、あは。あとで写させろ」

「えー、また?あは、やだよ」

「てめえ、ふざけんなよ、あは」


万事が万事、こんな感じ。

『あは』のおかげか、みんなの雰囲気が柔らかく優しくなっているような気はするけど・・・・

なんだか僕、おかしくなりそう。

というか。

なんで僕1人だけが『あはの呪い』にかからないかって?

それは。


僕が未だに、手塚君とあまり喋れていないからであって・・・・



「ね、目黒奏太君」


突然、手塚君が僕に話しかけてきた。

僕はびっくりしてドキドキして、黙ったまま手塚君を見た。


「今日、一緒に帰らない?」

「・・・・うん、いいけど」

「あはっ、良かった~・・・・僕ずっと、目黒君に嫌われているのかと思ってた」


そう言ってニコニコ笑う手塚君を、僕はやっぱりドキドキしながら見つめていた。

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