逃げるパンダ
静野 ふゆ
第1話
あたしは走っていた。
髪が風に流れてゆく。
息が上がる。
目の前がゆがむ。
でも止まれない。
なぜなら背後から―――
背後から、あの人が
追いかけてきている。
あの人が。
あたしが振り返ろうとしたところで、目が覚めた。
またあの夢を見ていたと気づく。
何度も何度も見た夢。
もう追いかけてきてはくれない、あの人の夢。
どうして逃げていたんだろう。
どうして、立ち止まって振り返って、あの手を取らなかったんだろう。
どうして、あの人が疲れて去ってしまうとわからなかったのだろう。
あの人の手が温かいと知っていたのに。
こんなに泣くなら。
こんなに何度も夢を見て泣くなら。
どうして。
答を出せないあたしは。
答を出したくないだけのあたしは。
いつまでもいつまでも夢の中で逃げ続けている。
***
以前、水ぎわ様開催のイベントに参加させていただいた時に近況ノートに書いたものですが、私自身、結構気に入っておりました。
なんせ、言葉がまた降ってくるようになってすぐに、勢いを持って書いたものだったので。
で、少々手を入れて、こちらに公開させてもらおうかな、と。
申し訳ないのですが、タイトル以外はパンダではなくなりました(笑)
逃げるパンダ 静野 ふゆ @ponmama
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます