どっせい!! 〜お笑い芸人を目指す環と宇宙人を信じる柴〜

西山曜

プロローグ われわれは宇宙人だ!

 水沢屋の肉じゃがコロッケを知ってるか。

 そう、あの、肉も、じゃがも、なんなら糸こんにゃくも、にんじんもごちゃ混ぜにした特製コロッケのことだ。西商店街の入り口に店を構える水沢屋の看板商品で、毎週水曜日は特別大サービスで、肉じゃがコロッケ一つ30円になるという代物。

 高校生のために編み出したサービスだ、と店主が語る肉じゃがコロッケの味つけはというと、そこはさしてこだわりが無いらしく、誰もが想像する肉じゃがのコロッケ版という具合だった。しかし、安けりゃなんでも良い。安さこそ最高のサービスだ。

 ありがたいことに、カウンターには塩の瓶が置かれてある。コロッケにかける用だ。おばちゃんお手製の肉じゃがを使用しているため、日によって味付けはまちまちだ。ほとんど味がついていない日だってある。そんなとき、塩さえあればなんの問題もない。

 じゃがいもに塩振っとけば美味しくなる、という方程式がそこにはあった。

 たまき伸太郎しんたろうは、しょっぱいものが大好きだった。ポップコーンも、ポテトチップスも、なんでも味付けは塩を推している。塩は、濃ければ濃いほど良い。無料ただでかけられる塩ならば、なおのことだ。

 味見すらせず、手首のスナップを効かせて塩をふり続ける。

 すると、となりにいた相方のしば雄二ゆうじが、

「宇宙人ってお腹へるんですか?」

 と言った。

 ほーん、なるほど。そうきたか。環はすぐに頭のノートをめくって、新しいページにネタを書き込んだ。今回のはシンプルな切り返しのくせに、なかなか腹が立つボケやったな。さすがオレの相方や、恐れ入ったわ。

 脳を使うかたわらで、肉じゃがコロッケを頬張ることもわすれない。大きな口でひとくち齧れば、はふはふと口から噴き出す湯気。今日の肉じゃがは醤油がよくきいている。わりとしょっぱい。さすがの塩派も砂糖が恋しくなった。

 環は、もちゃつく口の中を整えてから、ゆっくりと関西弁で話しかけた。

「あんな、柴くん。生物はみんな、腹がへるねん。仮にオレが宇宙人やったとしても、それは同じことなんよ。食べることは生きること、アンダスターンド?」

「じゃあ、宇宙人もコロッケ食べるんですね」

「おん、食べる食べる。とりあえず、冷める前にコロッケ食べさせてくれへんか。柴くんと話しとったら、が柴くんのことまで食い散らかしてしまいそうや」

 と、環がボケ返した。途端に、柴の顔色が悪くなる。

 ほう、これまた妙な勘違いしよったな。環は、相方の心境が手にとるように分かったが、いつまでもオレに甘えるなよ、という叱咤の意を込めて、柴の背中をドンっと叩いた。

「いっ……!」

「とにかく、お互いの腹のために完食しような。ネタを考えるのは、オレのアパートに着いてからや。そうしよ、よし決まり」

「待ってください環さん。アンタ、お腹に虫飼ってるんですか。それは今すぐ出した方がいいですって、お腹に良くないですよ。あっ、便秘の薬とか買ってきましょうか?」

「柴くん……オレさ、腹減っとるって言ってたやん。それやのに、腹の中のもんが出る薬を買ってきてどうするん。オレの腹の中、すっからかんになるやん。なんや、オレは今から胃カメラでも飲むんか」

「宇宙人の胃カメラはちょっと見てみたいです」

「あーあー、話にならんなコイツ!」

 大きな声で環がつっこんだので、学校帰りの高校生達が振り返った。勘弁してな、漫才の練習中やったもんで。心の中で謝った。

 環は単純明快な関西人なので、ちまちまとしたことが嫌いだ。ドカンと派手なことが好き。なので、大きな口でがつがつとコロッケを頬張りすすめていた。オカンには「食べさせてない子みたいに見えるから、外ではやめときや!」と口酸っぱくして言われてきたが、腹が減ってはオカンの効力なし。環は、気持ち良いほど口いっぱいにコロッケを詰め込んで食べた。

そして最後の一口を放り込んだとき、となりの柴が、まだ二割も食べていないことに気がついた。観察していると、信号機の待ち時間のときだけコロッケをちびちび食べているようだった。歩きながら、食べる。そういう同時進行が苦手らしい。

 問題は、その一口が小さすぎるということ。呆れるほど口が小さい。芋虫かっていう感じで。しかもそのうえ、歩き始めればまた口が止まるのだから、話にならない。

「あーもうっ、オレが腕引くから、柴くんは食べることに専念しいな」

 痺れを切らした環が腕を引いて、強制的に歩かせる。

「恐れ入ります」

「黙って食ってくれ。口止まっとるから」

 保育園児でももっと上手くやるだろうに、食べ歩きすらできずによくここまで生きてこれたな!

 商店街を抜け、電灯がポツポツと立つ住宅街に入ると、柴の顔色はいつしか良くなっていた。さっきまで“腹の虫”を真に受けてビビっていたくせに、切り替えのはやい奴め。

 掴んでいた手を離す。柴は律儀に肉じゃがコロッケをちびちび食べ進めていた。冷めて質量の増えた油の塊が美味しいだなんて、到底思えない。よく食べられるな、コイツ。

「それ、オレん家で温めたらええやん。もう美味しくないやろ」

「でも、カロリーとってるって感じがして良いです」

「さよか、その発想はなかったナー。さすが柴くんや」

「結構やみつきになります。あっ、よければ胃カメラで見せましょうか?」

「はったおすぞ、気持ち悪いこと言うなや」

 柴の頭をはたく。身長差のせいでこめかみしか叩かなかったが、良い音がしたのでよしとする。

 コロッケを食べて血行が良くなったのか、柴の頬はほんのり赤くなっていた。しかし、その顔。頬がこけているせいで品がなく、目ん玉は若干前に押し出されてしまい、怖い顔つきになっていた。コロッケのおかげで顔色が良いとはいえ、おいそれと脂肪率が変わるわけがない。そしてまた、その気持ち悪さに拍車をかけるのが、柴の体格だった。縦長のモデル体型といえば聞こえはいいが、肉付きが悪いせいで余計に顔が強調されてしまい、よっぽどコイツのほうが宇宙人らしかった。

 初めて柴に会った河川敷でも、環はまったく同じことを感じていた。

 一か月前、今よりも環の髪色は明るかった。スタイルから入るタイプの環は、髪をショッキングピンクにして、毛先をワックスで遊ばせるという技を身につけていた。

 そのスタイルで東京に殴り込みに行こうとしていたのだ。

 お笑い養成所に入るために貯めた40万円が盗まれたのは、上京する前日のこと。梅田駅だった。阪急からの乗り換えで地下に降りた環は、入り組んだダンジョンと対峙していた。

 どう行けば迷わずに大阪駅に到着できるだろう。スマホで地図を確認していた環は、万札の入った鞄を足の間に挟んでいた。今思えば、それが良くなかった。

 気がついた時には後ろから背中を押され、点字ブロックで肘を打ち、「なにすんねん!!」と怒鳴ったが、時すでに遅し。黒い服の二人組が、雑踏の中に紛れていくところだった。

 すぐに駅員に助けを求めれば良かっただろうに、当時はそんな余裕もなく、

「クソったれが、死んでも万札、取り返したるからな、あほんだらぁ!」

と、傷んだ髪を振り乱して起き上がり、血眼になって聞き込み調査した。金が絡むと頭に血がのぼりやすいのは、関西人の悪いところだ。

 そうしているうちに頭が冷えて、警察だの駅員だのに相談することを思いついたのだが、それでも結局、犯人は見つからないまま朝を迎え、環は予約していた新幹線に乗ることとなった。犯人が見つかり次第連絡します、と警察には言われたものの今だに音沙汰なし。完全に負けた。完敗だった。

 ポケットに入れていたおかげで難を逃れたスマートフォンと通帳、免許証だけを持って、新幹線で揺られること三時間。東京駅に着いた。着の身着のまま、鞄すら持っていない状態で新幹線から降りた環は、傍からすれば買い物帰りのチャラ男にしか見えなかっただろうが、そのときの環は全財産を身にまとっていたのだ。

 落ち込んでいても仕方ない。朝日に「絶対盗られた以上の金を稼いだる」と誓い、環は新天地に足を踏み入れた。

 そして、東京の空気の悪さに鼻をつまんで悶絶した。アパートの裏を流れる用水路のひどい臭いといったら!

 それならば水から遠いアパートを選べばいいだけの話なのだが、環の中には、『下積み時代は河川敷で苦労するもんだ』という謎の決まりごとがあった。そのためインターネットの評価よりも、“河川敷にすぐ行ける!”という謳い文句に食いついて、今のアパートに即決した。

 今さらながら思う。東京に土地勘がない人間にも伝わるぐらい、丁寧に注釈をつけてほしかったと。

 通帳に入っていた金を少しずつ使って、一日二食の飯を食らう。そして日が昇れば、家賃3万の格安アパートで考えたネタを河川敷まで行って披露し、17時に流れる区内放送とともにアパートへ帰宅する。実に健康。こんなんで良いのか、いい歳こいた大人がよぉ。しかし、小学生並みに健全な生活を送っていたおかげで、お肌の調子はやけに良かった。

 大阪で貯めた金が底をつく頃、やっとバイトが決まった。コンビニの夜勤バイトだ。お世辞にも給料が高いとは言い難いものの、夜勤帯の出勤であれば日中に漫才の練習ができる。時間の有効活用とは、こういうことをいうのだろう。あとは若さでどうにか乗り切ってみせる。環は、あくせく働いた。

 問題はネタのほうだ。大阪から上京するにあたって、関西を捨てるぐらいの覚悟で出てきたのだから、東京の人間に舐められたりなんかしたら、実家に帰れなくなってしまう。

 そう思うと、ネタを書く筆は一向に進まなかった。やっとできあがったネタでさえも、ちぐはぐで、穴だらけで、見直すことすら恥ずかしくなる内容だった。ずっと書きたかったはずの宇宙人ネタなのに、ちっとも面白くない。書いた本人が、一番そう思っていた。

 そんな矢先、河川敷でバッティング練習をしていた近所の小学生が、環の前に座ってきた。

 そして、ふてぶてしくジュースをあおって言った。

「お笑い芸人って初めて見た」

 記念すべき一人目の客。拍手も、入場料もない。お笑いの劇場で見たようなスポットライトはどこからも差し込まないけれど、それでも見てもらえたことがうれしくて、環は毎日その小学生にネタを見せた。そのうち、一人、二人と観客は増えいった。

 小さな観客たちは、家から持ってきたスナック菓子を見物料として差し出してくる。それをつまみにして、漫才の反省会は開催されるのだった。

「あのさ、環は宇宙人になりたいの?」

「いいや、ちゃうよ。奇想天外なボケをかますために、そういう設定のほうがええと思ったんや」

「いっつも宇宙人ネタだし、髪の毛も変なピンクだし、てっきり宇宙人にあこがれてるのかと思った」

「おいコラ、髪の毛は関係ないやろ」

「世界観がよくわかんないから、そのネタやめようよ。それに、そういうキャラ設定で売れた芸人って、一発屋っていうんでしょ?」

 小学生の曇りなき眼が突き刺さる。一瞬口ごもった環は、しょっぱい唾を飲み込んで、ぼそっと言い返した。

「せやかて、宇宙人には夢があるやん……」

「今どき、宇宙人を信じる小学生いないから」

「僕のじいちゃんが言ってたよ、昔の人は、宇宙人とかそういうのが好きだったんだって」

「それ、おじいちゃんだからだろ。もう時代遅れだよ。今は流行らないし、やるなら動画配信とかそっちの方がかっこいいって!」

 子供たちの言葉が、胸に刺さる。今年で二十六歳の環は、もう決して若くない。

 せやな、そうやんな――いつの間にか、世の中の感覚とずれていたんだな。環はポテトチップスと一緒に、好きだったネタを飲み込むことに決めた。

 歯で噛み砕いて、小さくして、飲み込んでいく。消化しきるまでに時間はかかるだろうが、肥溜めに送るのが少し早くなっただけの話だと自分に言い聞かせた。

 助言をくれた小学生たちが区内放送で帰ってしまい、残ったのはスナック菓子のカスだけだった。

 環はお菓子袋の端を持ち上げて、そのまま器用に三角を作った。この、最後に残ったお菓子のカスがおいしいって、今の子供は知らんのやろうな……。

 環はポテトチップスを咀嚼しながら、胃の中のものが消化されるのを待った。丁寧に噛み砕いて、のどに詰まるものがないぐらい、飲み込みやすく。そのとき、坂の上から声をかけられた。

「政府にばれたらまずいですよ」

 やたらと真剣な声。しかも物騒な内容ときた。さすが東京、いろんな人がいるもんだ。

 環は他人事だと思って、帰る準備をした。

 急に肘を引かれる。そのときやっと、声の持ち主は自分に話しかけたのだと気が付いた。「えっ、なに?」

「政府にばれたらまずいですよ、僕の家に来てください」

「えっアンタ、どちらさん?」

「名乗るほどの者じゃありません」

「いや、名乗れや」

 腕を振りはらって、距離を取る。掴まれた肘は、簡単に振りほどけた。

「あ……」

 男の太い声が漏れる。残念そうに言いやがって、腹立たしい。それに男の顔ときたら!

 くっきり二重は半開き、細い眉の尻のほうがふた別れになっている。極めつけは、血走った男の眼球。気色悪くて、なんやコイツ、とすら思った。

 それにその髪型! まるで、音楽室の肖像画みたいに伸びた黒髪は、根本からうねってるわ、肩まであるわで、大変みすぼらしかった。

 怪しい、怪しすぎる男だ。環は警戒した。168cmしかない自分の体では、男にリーチ負けするかもしれないと日和った。けれど、相手をよく見てみると、ひょろっこい体つきをしていることに気がついた。それに、喧嘩慣れしている雰囲気じゃない。なんだか勝てる気がした。

 さあ、どっからでもかかってこいや!

 環が身構えると、急に男はポケットの中を探り始めた。

「君、なにしとん?」

 まさか、獲物を取り出してるわけじゃないよな。さすがの環も、ナイフみたいな武器とご対面する度胸はない。今まで物理的な喧嘩をしたことがなかった。

 唾をごくりと飲み込むと、相手は首を振って否定した。

「さっき、名乗れって言われたので」

 両手で持って丁寧に渡されたのは、一枚のカードだった。

「これは……学生証?」

「はい、東明南とうめいみなみ大学の二回生、柴雄二です。専攻は心理学です」

「それはまぁ、ご丁寧に。ってなんでやねん」

 反射的につっこんで、思わず学生証を両手で押し返した。いや、一体なんや?

 環は首をかしげた。たしかに彼に名乗れといったが、自己証明しろとまでは言っていない。まず、初対面の環にたいして、個人情報をあけすけに教えるだなんて、この子のプライバシー概念は大丈夫か。てか、そもそも、なんかちょっとずれてないか?

 相手の性質がだんだん分かってきた。環は、物おじするのも馬鹿馬鹿しくなり、強めの口調でいった。

「えっとな、あー柴くん?」

「はい」

「初対面の相手を家に連れて行こうとすな。誘拐や」

「宇宙人相手でもですか?」

「おん。そんでもって、さっきから言っとるその“宇宙人”って、いったい何なん?」

 環は、小さくガッツポーズをした。気になっていたことを聞いてやったぞ。

「アンタがさっき、自分で言ったんじゃないですか」

「オレが、自分で?」

「はい。いくら小学生とはいえ、保護者にばれたら大変なことになります」

 小学生とは、あの小さな観客たちのことだろうか。保護者に言うもなにも、バレているからこそお駄賃のスナック菓子を持たせてくれているわけで、やましいことは一切していない。

 やはりこの男、オレのことを勘違いしとるな。

 環は、親切にネタバラシをしてその場を立ち去ろうとしたが、一瞬考えた。そういえば、コイツだけだった。オレの宇宙人ネタを本気で聞いてくれたのは。

 その柴はというと、学生証をポケットに入れながらも、その目は環をじーっと、食い入るように見続けていた。落書きみたいに、はっきり引かれた二重瞼と、眠たそうに半開きになっている瞳。どちらも、はじめはふざけているのだと、環は思っていた。

 けれど柴は、はっきりとした口調でもう一度言った。

「宇宙人だと言ったらだめです」

「ふーん、それはなんでや?」

 なかば誘導尋問。自分のネタに反応する柴が、もう一度見たかった。

 何も知らない柴は、言葉を繰り返す。

「政府に捕まるからです」

「……ふは」

「なんで笑うんですか、一大事ですよ。そうなったら、アンタ、帰れなくなりますよ」

 真剣に怒られる。でも、眠たそうな顔で眉を寄せられても、全然怖くない。いや、でも、二股に分かれた眉裾をきゅっと上げて睨まれたら、だんだん面白くなってきた。

 顔芸をする芸人は数多くいる。しかし環は、顔芸があまり好きじゃなかった。今まで一度も、それを面白いと感じたことがない。その場しのぎの芸だとすら思っていた。

 けれど、柴の顔はどうだろう。歌舞伎役者が見得を切るときの化粧に似た顔で、眉をつり上げたまま、真剣に「宇宙人」の話をしているのだ。これは、なんと、滑稽なことだろう。笑わずにいられるかって話だ。 

「ひひひっ」

 横隔膜が引きつって、笑いが止まらない。コイツはずるい奴だ。身体的なお笑い要素を十分に兼ね備えて、そのうえ環の大好きな宇宙人を信じるだけの頓珍漢な頭を持っている。あー、コイツと漫才できたら、楽しいやろうな。

 いいや、絶対面白いに違いない!

 そう考えたとき、すでに環はピン芸人ではなく、コンビ芸人として脳を働かせていた。

「あのさ柴くん、オレが政府に捕まらんように、君が誤魔化してくれへんかな?」

「僕が、誤魔化す?」

「そうそう、誤魔化すんや。もしもオレが宇宙人やって気づかれたら、オレは地球をどうにかせなあかんからな。そうなったら大変やろ? だから柴くんは、オレが変なことをしはじめたら、それを誤魔化してほしいんや」

「面白おかしくって、一体どうやればいいんですか」

「そんなの、柴くんはそのままおってくれたらええよ。ほんまに。君はそのままで十分、天才なんやから。あとはオレが、とびっきりのネタを用意するわ」

 それは、環に課せられた一番の試練だった。どんだけ食材がよくても、調理方法が良くなければ、誰にも食べてもらえなくなる。ようは料理人の腕が試されるのだ。

 これから宇宙人ネタ以外も考えないといけないだろうが、それを楽しみにしている自分がどこかにいて、環は不思議な気持ちになった。案外オレって、コンビに向いていたのかもしれんな、なんて。

 柴は、分かりにくい表情ながら、困惑している様子だった。

「よろしくな、柴くん。地球の運命は君にかかってるで」

 環が軽はずみに言ったこの言葉。

 柴はこれを本気にして、数年たっても「僕は地球を救ったんですか?」と質問し、環の胃がキリキリすることになるのだが、このときの環はまだ知らなかった。

 

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