読後感

第25話 再生

 前にも来たことがあるような気がした。

 幼い頃に入院でもしたのかもしれない。

 でも僕は何歳なんだろう。あれ、僕の名前は…………?


「目が覚めました?」

 とても美人な看護師さんが声をかけてきた。窓の外は真っ暗だから『おはよう』とは言ってくれない。

 何だろう、この人も前に会った気がする。

「スズキさん?」

「はい?」

「あ、その、思い出せなくて」

「何がです?」

「前にも会いませんでしたか?」


 ―――ハルカ君と私が?―――


「ハルカ?」

「やだなぁ、アナタの名前じゃないですか、君」

 確かに懐かしい響きのようでもある。


「実はね、また病院ここに来てくれる。そんな気がしてた」


「それってどういう」

「アナタが入院したのは、いろんな女の子にモテモテだったから」

「え?」

「だから、いろんな子がアナタと心中しようとしたんだよ。いいえ、アナタはいつだって深く愛するには、深く心に刻まなくてはと、想いと一緒に相手を殺してきたの」

「何の話を」

「ふふ、心配しないで。アナタは殺人犯じゃないよ。ただ心中相手であろうとしただけ。アナタはずっと愛されていたのに、そのことを忘れる病にかかっている」

「……僕の好きな人は生きているんですか」

「うん、目の前に」

 スズキさんの唇は、ほんのりと塗られたリップグロスのようなものが魅惑的で、そしてほんのわずかに甘い気がした。

 キスをしてすぐに頭痛がしたが、幸いにして僕は看護師さんの腕の中に眠っている。このことも忘れてしまうのかな。


―――結城宮子が出所出てくるまでは大丈夫そうね―――

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黒い革手袋に撫でられて 綾波 宗水 @Ayanami4869

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