西洋絵画の大波に揉まれる波瀾の時代。近代日本の画壇も転換期を迎えておりました。絵筆を携えて上京した若者は、技巧を学び、絵心に悩みつつ、成長を遂げて飛躍します。
読者は主人公と一緒に、奥深い絵画のテクニックと画家の心得について手ほどきされるかのようです。挫折もあれば、喜びもあって、画壇も人の世も移り変わります。
優しく、救いの手を差し伸べてくれる方々に癒され、励まされ、才に恵まれた絵描きは、激動の時代を粉骨砕身、心血注いで駆け抜けて行きます。
月も輝き、鳥も舞い、そして柔和な顔で見つめる家族も兄も、良き友もいる…読後、目の前には色彩豊かな六曲一双のゴージャスな屏風絵が置かれることでしょう。