奥ゆかしい残酷

小説投稿サイトという大舞台を逆手にとった大胆さと、ヒタヒタと這い寄るような素朴な文体の不気味さとのコントラストが印象に残る作品だった。

「奥ゆかしさの中にも肝が据わってる……、この発想は思いつかなかった」という感想を抱いた。真に迫るような憎しみの感情が綴られており、憎悪が現実を侵食していく感覚を味わさせる妙技には思わず唸ってしまった。作者様の構想力が光った作品だった。

展開の起承転結にも優れており、小さな工夫が結末に収束していく様は、お見事の一言に尽きる。丁寧な構成は奥ゆかしい文体とマッチしていて、それだけでも十分に不気味である。感情を内側に込める緊張の糸が最後に切れる様子は確かな恐怖を感じさせた。間違いなく力作である。

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