非情に整った物語。

 時代設定に則した文章が流麗に書かれているところが魅力的です。江戸時代に生きる人々の人情の機微が垣間見えるような作品です。それは現代人が見失いつつある、意地と見栄の世界でもあります。こういう物語はちょっと珍しい世の中になってきました。
 また、起承転結のはっきりした構成であることも良いと思いました。やや、転に盛り上がりに欠けますが、すらすらと流れるように進行するので読んでいて心地が良かったです。文章構成も整っており、読みやすいのも魅力です。多くの意味でお手本となるような綺麗な文章の作品であると思います。勉強させていただきました。