ちゃんと死んでね?
nikata
前書き
私は今後、お腹の中の子を命がけで守っていかなければなりません。たとえ敦さんがこの世界から居なくなったとしても、まっとうに生きていかなければいけないのです。ですから、あなたのことを殺したいほど憎んでいても直接手を下すような愚かなことは致しません。その点についてはご安心ください。
私がネットで小説の投稿を始めたのは、ある知人の言葉がきっかけでした。
その知人に勧められる形で、私はこちらのサイトに拙作を投稿するようになりました。その点においてはその知人に感謝しています。仮に、ここではその知人の名前を優子さんとしておきますね。
もっとも、本人にこちらを読まれたらすぐに気付かれてしまうでしょうけれど。
私と優子さんは大学時代に知り合いました。当時から優子さんは何事にも消極的な私とは正反対で、ポジティブな性格の持ち主でした。所属する文芸サークル内でもグループの中心に居たのはいつも優子さんだったと記憶しています。私はそんな優子さんを中心とするグループの輪に加わろうとして加われず、その輪の外側から何が楽しいのか分からないながらも、ただただ愛想笑いを浮かべているに過ぎませんでした。
そんな正反対の属性の持ち主である私と優子さんの唯一とも言える共通点は、好きになった男性が同じということでした。
私たちの所属していた文芸サークルの
程なくして優子さんは水川部長とお付き合いすることになりました。傍目から見てもとてもお似合いの二人でした。いつも綺麗で、お洒落で、明るい優子さんは同性の私にも魅力的に映ったのですから、水川部長が彼女を選んだのも当然だったのだと思います。勿論悔しい気持ちもありました。ですが、勇気を出して行動に移したのは優子さんであって、意気地のない私ではありません。それについては認めざるを得ないと、その時は妙なところで大人ぶって納得しようとしていました。
大学を卒業後に、街で二人が連れ添って歩いている場面に鉢合わせたこともありました。こちらの小説投稿サイトのことを私に教えてくれたのはその時でしたね。二人の仲睦まじい様子を眺めていると悲しいという感情よりも、素敵だなあとか、お似合いだなあという思いの方が勝ってしまいました。想い人が笑顔を向ける相手。それが自分ではないというのに。不思議なものです。でも、それも今となっては良い青春の思い出なのです。だって、こんな私でも敦さんと結婚を迎えることができたのですから。
前置きが長くなりましたね。
先日、偶然にも喫茶店で優子さんと再会した時のお話を書くつもりだったことを、うっかり失念するところでした。喫茶店でお会いした際、優子さんは教えてくれましたね。覚えていますか?
『ホラー小説を書いているのなら、こんな話はどうかしら?』
今回投稿させていただくのは、その時優子さんが教えてくれた話です。
ある種、個人に宛てた内容をこのような場で書き記すことをお許しください。
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