平穏に暮らしている
かように、なんとも異様な家庭ではあったが、それでも、一般常識からは遠く外れていても、そこに暮らしている者達にとっては、特に問題なかったのかもしれない。働く必要も学校に行く必要もなかったのだから。
確かに、現在の
今の日本社会で生きていくには問題だらけでありつつ、当人達には危機感のようなものはまるでないらしい。ただ今この時が充足していればそれでいい。それ以外には何も望まない。
そんな生活を可能にするだけの資産があったことと、他者との関わりを極力避けようとする現代の空気が、真紗子達のような人間を生んだのだろうか?
それがどうであれ、彼女達は何か不満を口にするでもなく、ひたすら毎日を平穏に暮らしている。
そう、
『平穏に暮らしている』
のだ。
メイドは思う。
『この方達を見ていると、<幸せ>とは何なのかが分からなくなりますね……』
そんなことを考えているメイド自身、すでに正気ではないのだろうが。
そして真紗子はまた、リビングのソファに座り、首のない人形を抱いたまま、虚空をただ見詰めていたのだった。
蟲夢 京衛武百十 @km110
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