飛行機雲
白川津 中々
■
「飛行機雲ってどうやってできるの?」
「それはね。飛行機雲発生おじさんが足の裏から出してるんだよ」
子供が聞き、男が答える。日常にありふれたごく一般的な、まったくほのぼのとする光景である。
「飛行機雲発生おさじさんってなに?」
物知らぬ子供が知識を求めるは当然の成り行き。そして、知識を授けるのは大人の役割である。男は柔かに微笑み、大人としての責務を果たさんがため、口を開いた。
「飛行機雲を発生させるおじさんの事だよ。どれ、論より証拠。見せてあげよう」
そういうや否や男は全力ダッシュを決め飛翔。秒間三十億回転の足回しにより速度を、同じく秒間三十億回の腕部上下運動により浮力を得てフライハイ。子供が質問を寄越したのは奇しくも、飛行機発生おじさんその人だったのである。
「あ、燃えてる」
男の足裏は摩擦熱により発火。発煙。モクモクと上がるスモークが進行方向に向かって線となり、彼方へと消えていった。残ったのは子供と、群青に刻まれた飛行機雲だけであった。
飛行機雲 白川津 中々 @taka1212384
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