おわりに シゴト万事塞翁が馬
コンピュータ関連の子会社に入社した22歳のとき、技術を磨きながら年齢とともに会社の地位が上がり平凡なサラリーマン生活が続くのだろうと漠然と予想していた。ところが予想に反して営業職への転身、シンクタンクというブランド企業への転職、金融関係の仕事へと業界、職種を転々とすることとなった。その中で、産業スパイ、役員との対決、降格や左遷、顧客や社内での恋愛体験などが巻き起こる。
振り返ればそれぞれが舞台でありドラマであった。「あなたが仕事を選ぶのではない。仕事があなたを選んだのだ」という言葉がある。まさにヤスオはシナリオを与えられそれを演じたに過ぎない。退屈することのないドラマであった。降格、減給、左遷・・・不遇のなかで、ヤスオは新たな価値観を見つけた。人生をドラマ、映画だとするならば、経済的な豊かさと安定はつまらぬ凡庸なものである。波風があるほど充実した人生であるといえる。そのような意味でヤスオのサラリーマン生活は充実感の得られる舞台であった。そこに満足している。
ヤスオが早期退職を決めたとき、同年代のひとからは勇気ある決断と言われた。安定を捨てることは普通はできない。しかし、さまざまな業種、職種を経験し、組織の底辺で生き抜いたことで、何も失うものはないという自信、腹がすわったのである。組織を出てフリーターとしてさらに筋書きのないドラマが始まる。
シゴトなりゆき放浪記 転職編 猫乃なみだ @kanete2
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