意外な原因による「萌え」文化の死滅

@HasumiChouji

意外な原因による「萌え」文化の死滅

「すいません……。色々とやってみたんですが……市長が例の法律の賛成派でして……」

 地元の市役所の広報課の職員の人は、電話で、すまなそうに、そう言ってきた。

「えっ?」

「ですので、今回の話は、無かった事にしていただけますか?」

 俺が運営している萌え系のVtuberが地元の広報に使われる話が進んでいたのだが……何故か、正式な契約を交す直前で、話がシャってしまった。

 担当の人は、結構乗り気だったらしいのだが……。

「例の法律……ですか?」

「ええ……迂闊でした。もう、十年以上もああ云う状態でしたから……アニメ絵や萌え絵に対して、もうすぐ施行される法律で規制されるアレのイメージを持ってる人が、結構居るんですよ」

「あ……あ……あの法律ですか……」

 そう言いながら、ネットで、ここ最近の国会で成立した法律を調べてみたが……無い……それっぽいのが無い。

 少なくとも、直接的に「アニメ」「萌え」を規制するような法律は……見当らない。

 どうなってんだ?

「ええ……予想外でしたね。こんなに早く話が進むなんて……。この前、法律が成立したばかりなのに、もう、来月には施行ですから」

「ですけど……フェミ系のカルトの連中って、そんなに勢力が有ったんですか?」

「えっ? じゃ……じゃあ、俺、実は国会議員のYさんとtwitterで相互フォローしてるんで……」

 俺は「マンガ・アニメ表現の自由」を公約に掲げてる与党議員の名前を出した。

「だから、


 訳が判らないまま、数日が過ぎた。

 そして、土曜の朝、近くのコンビニに朝飯を買いに行く途中……いつもの休日の朝に見慣れたあの光景が無かった。

 自宅とコンビニの間に有るパチンコ屋に、開店前から並んでる奴らが居な……おい……何だ、こりゃ?

『長い間、御利用いただき、誠にありがとうございました。当店は間もなく施行されるパチンコ規制法への対応が困難な為、閉店させていただきます。御了承下さい』

 店の入口には、そんな貼り紙がされていて……店員らしき奴らが、店の前の幟やポスターや立看を撤去している最中で……そこに描かれているモノは……。

 お……おい、まさか……そんな……そう云う事なのか?

 ひょ……ひょっとして……いつの間にか「萌え絵」や「アニメ絵」を「パチンコ」と結び付けて考える奴らが増えてきて……いや、待て……まさか……地元の市役所が俺がやってるVtuberを広報に使おうとしたのも……オタク向けじゃなくて、パチンコ中毒者向けだったのか?

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