エピローグ
エレベーターホールで、僕はふと、気になったことを口にした。
「だが妙だな……。Qを作り上げるほどに、君の未来視は完璧なのに……いくら幼かったとは言え、僕の行動程度で変わってしまうような未来を、君は視ていたのか? 『未来が視える』と自覚できるぐらいには、その……視えていたんだろう。ちゃんと」
「それは私にも不思議だったんですよねー……。もしかしたら、アナタの行動にもいくつもの因果が絡んでいたのかも。それがたまたまあの日、重なって……。もしくは」
くるりと振り向いて、マヤは言う。
「アナタにも不思議な力があったのかも!」
それはない。
そんなものがあれば、僕はとっくに、独力で自分の事業をどうにかしていたはずだ。
あるとするならば、マヤを(間接的にとは言え、そして奇跡的にとは言え)助けられたこと。それによってこうして助けてもらえていること。その幸運そのものだろう。
ビルを降りながら、僕はもう一つだけ、彼女に確認する。
今後も一緒に仕事を続けていくならば明らかにさせておかなければならない。
本当に怖かった。だから、この確認が本当に最後だ。
「あの……もしかしてなんだけど……」
「なんですか?」
「いや、君が側にいてくれると心強い。だからこそ確認しておきたいんだけど……」
「?」
「マヤ、君は僕のこと」
「そういう感情は一切無いです。本当に」
ピシャリと僕の言葉を遮って、マヤは表情一つ変えずに答えた。
エレベーターのドアが開き、彼女はスタスタと歩いて行ってしまう。
「急に距離詰めてきましたね……ビックリした。『マヤ』だなんて……。あ、そうか。7年のギャップがあるんですね、アナタと私には」
「そ、そうか良かった……いや、残念だけど……いや残念だ。僕はもう自分の感情がわからなくて」
「社長! 次は女性の気持ちを勉強しましょうか! ちょっと尽くされたらすぐに勘違いしちゃう。これは未来まで続く、アナタの悪いクセです!」
ちょっとどころの尽力ではないと思うのだが……
彼女の言う通り、これが僕の愚かしさなのだろう。
だがしかし、7年のギャップどころか君は、ずっと僕のために計画を練ってくれていたのだけど。
「……本当に?」
「本当です」
ビルの外に出ると、空はすっかり
顔を逸らしていた彼女は、ふぅと溜め息をついてこちらに向き直す。
そしてまた、ニマリとあの笑顔を浮かべ、口を開く。
ビルのライトと朝日の入り混じった光に照らされるマヤの
「私がウソをついたことがありましたか?」
マヤノプロジェクト ウキタ リュウ @ukitaryu
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