第3話
「24時間営業のデリヘル、いっぱいあるらしいけど。部屋もう一つ借りて、別々に呼ぶか?」
「なんか……もうええわ。気が抜けてしもたわ」
尾花は着物の前をはだけて、ベッドの上にごろりと転がった。ちなみに俺も同じベッドの上にいる。ラブホテルであるからして(いや、知らんけど、ラブホテルだからなのだろう)でかいベッドだが、流石に同じベッドの上にいるというのは多少照れるものがある。というか、この上で4Pはたぶんきつい。怒られるのも道理である。
「なあ。気は抜けたけど、あっちは抜けとらんのや。オナってええか?」
「えっ」
いくら気心が知れた身とはいえ、見ている前で自慰行為をされた経験なぞはない。当たり前だろう。
「風呂場でやってくれないか?」
「風呂場でするん、苦手やってん」
俺は割と得意なのだが、今から俺が風呂場に行って自分を慰めても問題の解決にはまったくならないわけで、俺は困った。
「なぁ。こうしてみると、惣也ってやっぱり可愛い顔しとるよなあ」
「えぇ?」
確かに、人からよくそう言われはする。尾花は違うが、俺は女顔なのである。
「なぁ。俺の、咥えて抜いてくれへん?」
「……正気かよ、お前」
いくら俺が女顔だからといって、俺は同性愛者ではない。両性愛者でもない。……と思う。多分。
「嫌か?」
「嫌だよ」
「そっかー。俺は惣也のやったら咥えられるけどな」
「ちょっと待て。待て、本当に待て」
尾花がにじり寄ってきた。やばい。俺の貞操が。いや、普通の意味での貞操は大丈夫だが、違う意味での初めてを男に奪われるのは勘弁願いたかった。
「冗談や。手でするだけや。ちょこっと、楽にしたるさかい」
「そっか、冗談か。ならよかった。って、ええわけあるかい!」
ノリツッコミをしている間に、尾花の手は本当に俺の股間に触れていた。実は既に風呂に入ってバスローブ姿なので、割と直に近いところに手が当たる。
「……気持ち、ええか?」
「……答えるかよ、そんなこと……!」
しかし、俺はあっけなく射精してしまったので、そんなことは答えようが答えまいが同じだった。
「いやー、他人の栗の花ってキッツいわー。正直クサい」
「お、お前な……」
このまま最後まで犯されたりしたらどうしようかと俺は真剣に危惧したが、尾花は一人で風呂に入って行った。一人で抜いている気配がした。別に俺が風呂に入って行ってそれを手伝ってやる筋合いなどは毛頭なかった。
「なぁ、惣也。俺たちこの後どうなるんかな」
「俺は大学に戻ったら可及的速やかに彼女を作る。布以外でだ。お前もそうしろ」
「そうか。まあ、そうやな」
「そのギャグはこれでたぶん千回目くらいだぞ」
「はは」
俺は朝までまったく眠れなかったが、尾花は割とすぐに鼾をかき始めた。
そして朝が来た。昨夜のことなど何もなかったように、俺たちは大学生活に戻った。
そうや、宗谷行くで。 きょうじゅ @Fake_Proffesor
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