第2話
今は十月の中頃なわけで、宗谷岬は寒かった。石碑が立っていて海があるだけで、面白い観光スポットであるのかといえばかなり微妙ではあった。だが、俺たちは二人して樺太の方に向かって絶叫した。
「「海のバカヤロー!」」
悪い気分ではなかった。少なくとも、遠くまで来たという気はした。で、もう一発叫んだ。
「「
完全にハモった。十五年オーバーの付き合いの幼馴染の絆は伊達ではない。
さて、つまらないものばかり売っている土産屋で適当に時間を潰し、宗谷岬ツアーのバスで稚内市街に戻る。適当に入った店で食った海鮮丼はべらぼうにうまかった。
「これを食うためにここに住みたいという人間も広い世の中にはいるかもしれんの」
「俺は布のいないところに住むのは嫌だよ」
「それを言うなや」
もうろくに時間が残っていないので、二人して駅に向かう。帰りも宗谷号である。さすがに北海道を日帰りするつもりはないので、札幌で少し遊んでいく予定だった。だが、宿の予約をしていない。どうするんだ? と尾花に聞いてみた。
「札幌にはいっぱいラブホがある。そこに泊まるで」
「なんで俺がお前とラブホテルに泊まらなきゃならないんだよ」
「デリヘルや。デリヘルを呼ぶんや。それも二人。んで、4P決めたる」
「おいおい。本気で言ってんのか?」
俺の認識に間違いがなければ俺たちは二人とも童貞である。初体験から4Pか。それはやりすぎというものではないだろうか。しかし、金は尾花が出してくれるというので、文句を言う気にはならなかった。俺だってそりゃあ、彼女が欲しかったくらいだ、そっちの道に興味がないわけではないんだ。
そして宗谷号は札幌駅に着いた。そこからはタクシーを使った。適当なラブホテルまで、と言う。別に男二人だからって怪しまれはしない。男二人でラブホテルに行くやつの大半は、中で別の部屋に分かれて、別々のデリヘルを呼ぶものだそうだ。俺たちは同室だけど。
さて、適当なラブホテルにチェックインした。尾花がホテルの電話から、デリヘルの店に電話をかける。だが、「4Pで」と言うとどの店からも難色を示された。一番マシな感触のところでも、「三日以上前に予約してくれ」と言われた。札幌に三日もいる予定はない。俺たちは迷った。で、最後の手段を使った。俺と尾花が別々の店に電話を入れて、別々の店の別の女を同じ部屋に呼んだのである。で、それでどうなったかというと。
「兄ちゃん。北海道ナメたらいかんよ」
二人して、その筋の方に一発ずつ殴られた。金はとられなかった。こちらの年齢が若いことと、初犯であることを汲んでくれたものと思われる。
俺たちは腫れた頬を向かい合わせて、やれやれ、と肩をすくめた。
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